止めをさされそうになった時、現れた二つの影、天界人キルノートンと人間森あい。
 合体神器とやらを使おうとした瞬間、キルノートンがやられました。
 俺は思った。
 お前、何しに来たんだ?

  第三十八話 重圧

「ちょっと!!!起きて!!しっかりしてよ!!あんたが連れて来いって言ったんでしょー!? アレは!?“無敵合体なんたら”は!?ねえ!!」
 森はガクガクと血だらけのキルノートンを肩でゆする。キルノートンは「無念・・・」と言い残し昇天した。
 無念で済ますな、其処!!
「やるだけ無駄だよ。父さんに聞いて彼らの合わせ技は知ってる。どっちにしろボクに通用する代物じゃないよ。残念だけど君達の底は見えた。もう、消えてもらうよ?」
 アノンの瞳はあまりにも冷酷で残忍で、背筋が凍るかのような寒さを感じた。
「・・・もんか。」
 しばらく続いた嫌な沈黙は、声を上げた森の御陰で破られた。
「絶対・・・・・・消えてなんかやるもんか!!!」
 体中震えをあげているのがよく判る。が、そんな彼女がそう言っているのだ。
「・・・ふーん。たしかに君の能力が一番やっかいだからね・・・」
 もう少しだけ、
「一番最初に死になよ!」
 付き合ってやる。
「液体を道具に変える能力・・・モード・羅漢銭」
 森に攻撃をしようとした所で佐野のブーメランと俺の羅漢銭が飛ぶ。「羅漢銭」とは俗に言う「銭投げ」みたいなものだ。
 アノンは容易く両者を避ける。
「・・・・・・なんだ。もう諦めたかと思ったのに・・・」
「どんな生き物でも意地と言う物があるからな」
 今俺が持っている神器は九つ。だが内二つは移動関係に用いる神器。長時間は使えない。
 だが、まだ勝機はある。
「糸瓜!刺青!!」
 糸瓜とはバン、刺青とはディエゴスターに対する俺なりの呼称である。相手もそれで反応するし。
 しばらく小声で三人に話す。
「戦いの中で会話は、禁物だよ?」
 笑顔でアノンがこちらに向かってくる。が、タイミングを見計らって三年組が現れた。水寿(みすず)の手には護身用の(最近改造の才を手に入れたらしく竹刀ぐらいの長さになった)特殊警棒がある。
「遅いぞ」
「悪い悪い」
「立ち入る隙が見つからなくてな」
 不機嫌そうに俺が言うと素直に二人は謝った(かと思われたが水寿は反省の色が無かった)。
「んじゃ、例の行くぞ。」
 糸瓜と刺青は頷く。
「「「合体神器・百鬼夜行!!!」」」
 見えない、生きた神器がアノンを襲う。
「芸無いね」
「最初からお前は眼中にないよ」
 そう、アノンは目的ではない。
 目的は
「レベル2!テリトリー!!」
 俺の能力が組み合わさった「生きた見えない神器」でアノンを囲み、レベル2で奴の神器と動きを封じる事。
「!しまっ・・・なんてね」
 アノンは飛んだ。それと同時にテリトリーが完成した。
「そのレベル2、足が付いてるもののみ有効なんだよね?なら完成する前に離れれば良い。」
「く・・・ッ」
 そう言ってるが、俺の口元は少し綻んでいる。
「残念だったね 神剣(かばや)く・・・」
 クン、と引っ掛かる音がした。それと同時に、丸太が飛ぶ。
「な、」
 また、今度は岩。
「何が・・・」
 また、
 また、
 そして、また。
「何が起きているんだ!?」
「手当たり次第彼方此方にオレがブービートラップを仕掛けといたの。」
 予め奴等に数リットルもの水を持たせておき、空気中に出してから丸太や岩、ワイヤー等に変えたのである。
 そして、行き着く先は
「王手。」
 先程の、テリトリー。
 見事奴はテリトリー内に入り、身動きを封じた。

「さて、どうする?」
「このままだと俺達の攻撃も効かんからな。」
 このレベル2はある意味最悪な諸刃の剣である。
「・・・ねぇ?」
 アノンは俺に話し掛けた。
「このレベル2は、能力者以外にも有効なの?」
「あぁ、多分効かんな。」
 どんな奴でも効くのかどうかを湯木邑(ゆきむら)で実験してみたら何もなかったし。
「そう。」
 そう言うと奴は口を開ける。すると其処から見覚えのある奴が現れた。
 ロベルト・ハイドン。
 奴が口から吐き出されると奴はテリトリーを抜け出す。ハイドンを吐き出したと言う事は、能力者じゃなくなったと言う意味だからな。
 救出すべくテリトリーを解除するとそれと同時にアノンはハイドンを掴み、口に入れる。
「さて・・・、コレで君のテリトリーはもう効かない。ブービートラップももう無いだろう。」
 大して材料は無いからな。そろそろ俺の液体も切れる。
「んじゃ、続きといこうか。能力者達?」
 形勢は、再びアノンの有利となってしまった。
 勝てる要素はまだ・俺にはあるの、か・・・?

  トゥービーコンティニュー・・