少年の手中にライターが入った瞬間、大木が現れた。
 俺は直感で気付いた。
 “能力者”と・・・。

  第六話・銭湯の煙突と剣道五段少女

 先日の牛丼代は、結局俺が支払う事になった。
 今日はバイトもないし、かといって部活も無い。こういう日は公民館で「キ○の○」全巻読破するに限る!!
 俺が拳を固めて歩いていると、威勢の良い声が聞こえた。
「さあ!どっからでもかかってらっしゃい!!!剣道五段の腕が唸るわよ!!!(ウソ)」
「いろいろ大変だなお前も。」
 アレはあの時の・・・!女子の方は剣道五段なのか・・・いつか御手合わせして頂きたいものだな・・・。
 バイト先の一つである銭湯に人だかりがある。野次馬根性で俺も近付いた。
「あの・・・これは一体・・・?」
 近くの人に俺は問うた。
「銭湯の煙突の上!女の子が登って降りられなくなったんだ!!」
 確かに見ると少女が煙突の上にいる。根本として何故少女があんな所まで登ったのかはツッコミを入れないのか・・・?
「ん・・・?」
 煙突少女に近付く人影がある。
「よーしもうちょいや。しっかりつかまっときやー!下見たらあかんで嬢ちゃん!」
 そう年端の変わらない男が、煙突を登っていく。ふーん、結構良い奴もいるんだな。
「え?」
「あ!下見たらあかんて!!!」
 少女は手を滑らし、真っ逆さまに落ちる。すぐさま俺は水の入ったペットボトルを出す。能力を使う為に・・・。
 しかし、その必要も無かった。
 男は煙突に穴を開け、自分が落ちる事を顧みず、少女を受け止めた。
「・・・・・・・・・・・・ うわあああ!!! スゲーぞ兄ちゃん!!!」
 周りは歓声を上げる。
(降りる時どうするんだ、これじゃ・・・。)
 しばらくすると周りの雰囲気は変わる。
 煤塗れの男が現れた。
「! アイツは・・・」
 あの時の、能力者・・・ッ!!
 手から取り出したはお手玉。どうやら少女はソレを探す為に煙突に登ったらしい。少女は小粒の涙を流してお礼を言った。
「兄ちゃん!佐野清一郎。俺の名前や。ちなみに中三!」
 煙突によじ登っていた男が煤男に自己紹介をした。
「・・・・・・・・・?植木耕助。中一・・・出席番号・・・・・・・・」
 男が自己紹介の途中で五段少女が引っ張って立ち去った。せめて最後まで言わせてやれよ。
 ・・・・・・。
「ま、関係ないな。んじゃ公民館行くかぁ!」
 俺はそう言ってその場を立ち去った。

 読書と言うものは良いものだな。家でやりたいのが本音だが、喧しくてソレ所じゃないしな。
 今の所最後の巻の最後のページを読もうとした所で爆音みたいな音を聴いた。
「・・・何だ?」
 近くにある体育館状の建物から煙が立っていた。
「・・・・・・」
 俺は腰を浮かし、自分の持ち物を持った後、公民館を後にした。

「何が・・・、起きてんだ・・・?」
 見ると、先程の男女と巨漢の男が戦っている。そう言えば真久利の奴、今日からって言ってたっけ・・・能力者同士の戦い。
 上に上がって見る事にした。少女は巨漢に殴られ、気絶。男・・・植木は空のペットボトルを手に収める。
「イメージする・・・・・・!!」
 出てきたは栗の木。炎に当てられた木はバチバチと音を鳴らし、栗が弾け飛んできた。それが巨漢の左目に直撃する。
「げっ」
 俺の所にも飛んできた。迷惑だっつーの。ペットボトルから水を少量取り出し、意識を集中させる。
「液体を道具に変える能力・・・」
 モード三節棍!!
 すかさず、かつ気付かれないように栗を叩き落した。
 視界の隅に人影がある。
 人影は額の手拭(で通用するような長さじゃないが)を取り、前に翳すと、みるみる鉄に早変わりし、栗を弾く。
「あ・・・」
「同じ能力者にとって相手にとって不足なしや!!」
 あの時の、煙突男・・・!
 どうしてこうも知り合った奴は皆能力者なんだよ・・・。

  トゥービーコンティニュー・・