俺の名前は澄飼信(すみかいまこと)、中国人とのハーフであり暁中学校2年兼生徒会書記をやってます(字下手だけど)。数日前斎(いつき)と名乗る神候補からある能力をもらい、バトルに参加している者でもあります。
 ・・・何で俺、チンピラに絡まれてんでしょう・・・。
 時は数十分前に遡る。

  第七.五話 犬の散歩

 植木達がバトルしている同時刻、商店街の一角。
 彼は日課の犬・しまみ(♀)の散歩をしていた。
「今日は久し振りにトリミングしてもらうか。」
 しまみは喜んで尻尾を振る。その反応を見て信は急ぎ足でペットショップへ赴いた。

「いらっしゃい」
「いつもの頼みますね。」
「ハイハイ。今日は客が多いから、しばらくの間暇潰しにその辺ブラついて来たら?」
「そうですか!?んじゃ、御言葉に甘えて・・・」
 「しまみをその間宜しくー」と残して信は店を出た。

 国籍は日本人だが幼稚園から小学校を卒業するまでは上海で生活していた故に、この辺りの街並みは殆ど知らない。
 地の利を我が物にする為、彼は近辺をうろつき始めた。覚えられるようにメモ帳を片手に。
「この辺りに八百屋があって、その隣に肉屋・・・向かい側に魚屋があって・・・・・・今日中に覚えられるかな?」
 サラサラとメモをする。
 ふと、背後に気配を感じる。何かが飛んでくる。危険を察知して下にしゃがみ、足を上に上げ踵落しをするように飛んできたものを弾く。
 足を元の場所に戻し、飛んできた物を確認する。
 取れた釦。ソレ一つ。
「見つけた♡」
 風船ガムを膨らまし、釦を投げた主は言う。
 漆黒の髪は膝の後ろまであり、茶色の瞳、で・サンバイザーを深く被った少女。格好からはボーイッシュとしか考えられない。
「アタシの能力“釦を槍に変える能力”を容易く弾くなんてね・・・、流石は俊足閃光の一人だ。」
 不敵な笑みを浮かべて少女は言う。俊足閃光とは、能力者の間で噂になってる暁中学生徒会役員の事を言う。
「でもアタシは止められないよ!?釦を槍に変える能力ぁ!!」
「ちょ・・・っ 人ゴミの中で乱闘はごめ、おぅわ!!」
 とりあえず走って別の道へ誘う。なるだけ迷惑の掛からない、尚且つ人気がない・・・
 道を出ると、無数のチンピラに囲まれてしまった。
「引っ掛かったわね、澄飼信!!ネットでアンタが周りを気遣う奴って事は知ってるからね・・・協力を仰いだのさ!アタシ、これでもこのチームのヘッドだし。」
 コワモテ系の男達が武器を持って睨み始める。
「さぁ、朽ち果てて試合放棄しな・・・」
「何の?」
「早!!」
 信の足元には気絶した男の山があった。
「悪いね、俺・・・上海じゃ男相手じゃ容赦無い事で有名なんだわ。」
 返り血を拭いながら言う。
「アンタ能力者なんだろ?女の子だから能力は使わないどこうと思ったけどさ、仲間呼んだんだし前言撤回・能力活用させてもらうわ」
「ちょ、ま・・・っ」
「“自分”を―・・・」
 “龍”に変える能力!!
 信の身体に光が溢れ、巨大な龍に変化した。
「安心して、最低の力まで制御するから。」
 彼の咆哮で彼女は簡単に気絶した。

「ただいまー」
「お帰りなさい、しまみちゃん可愛くなったわよ?」
 毛繕いされたしまみを連れて、店主は言った。
「お、本当だ。可愛くなったなーしまみ」
 しまみも尻尾を振る。
「さ、帰るか。」
 しまみのリードを持ち、信は人ゴミの中に消えた。
 何故あんな能力を選んだのかは、本人のみぞ知る。

  トゥービーコンティニュー・・・