生徒会長・縹水寿(はなだみすず)、容姿端麗成績優秀、紋火(あやか)には劣るが運動神経抜群。彼の本性を知らないならば優等生に見える。
 しかし、彼も100ある能力者の一人。
 析羅(さくら)が能力者を倒した後、彼がいる所の真逆の街道から番外編は始まる・・・。

  第八.五話 仲間がいるから

 西神山(にしかみやま・4人が住んでる町の名前)、とある喫茶店。そこに彼はいた。
 客としてじゃなく、バイトとして。
 両親を亡くした後は兄の家に居候している。しかしその兄は大層遊び好きで、借金ばかり家に持って来るのである。それ故兄嫁と共に借金返済を試みているのだ。
「ご苦労様、もう上がって良いわよ。」
「有難う御座います。」
 ピークも過ぎ去りやる事もないので帰った。早く家に帰って、掃除して、食事の支度等、彼の頭の中は日々生き残る事しかなかった。
 今日は店主から唐揚げを貰ったので、ソレを活用した料理にしよう。この店の唐揚げは評判だから、きっと義姉も喜ぶと、街道をご機嫌で駆けていた。
 角を曲がる直前殺気を感じる。一度急ブレーキをかけ、止まると街灯の柱に何かが突き刺さった。
 手裏剣、ソレはみるみる針の姿に変わった。
「チッ、外したか」
「結構勘鋭いね」
 現れたのは二人の男女。男は季節はずれの厚手のコートを羽織り、茶髪はこの世の者じゃない感じに立っている。女も茶髪、露出の多い格好で、析羅に言わせれば「チャラチャラした奴」だろう。
「・・・何の用だ?こんな人気ある街道のど真ん中で」
 水寿はある程度判っているが、確認の為問う。男は馬鹿馬鹿しく答えた。
「お前を潰しに来た。」
 男は針を何本も取り出す。
「針を手裏剣に変える能力!!」
 投げられた針は手裏剣に変わり水寿を狙う。水寿はタイミングを計り、持っていた竹刀で弾く。
 女もシャボン玉の液を取り出し、シャボンを作ると、
「飛ばしたシャボン玉を・・・爆弾に変える能力ぁっ」
 接触したシャボン玉が爆発を呼ぶ。
 一つがビルの一角に接触し、爆発する。2,3メートル程の破片が街中の人の下に落ちる。
「! 危ない!!」
 ベビーカーを引く親子を庇って、水寿は破片の下敷きになった。
 周りが静まり返る。
「・・・や、やったぞ!俊足閃光の一人を倒した!!」
「名声は私達の物ね!」
 能力者はモバイルを取り出し、手に入れた才を確認する。
 が、
「・・・?何も表示されてないぞ?」
「何で?」
「相手がまだ倒れてないって事だろ?」
「!!」
 破片の中から水寿が立ち上がる。勿論、大怪我は負っているが。
「莫迦だな、これだけで勝ったとは目出度い奴よ。」
 額から血を流しつつ嘲笑を交えた皮肉を漏らす。
「・・・お前等、仲間でつるんでいるのか?」
 血を拭いながら男女に問う。
「そうよ!仲間じゃないけど・・・将来を約束した恋人同士よ!?」
 「ねー」と二人は声を揃えて言う。
「なら使えるわ。この能力。“相手の仲間”を・・・」
 “相手の敵の姿”に変える能力。
「ちょ!?どうしたんだぃ、マイラバー」
 女はゆらりとシャボン玉を作る構えを、恋人とか抜かした男にする。
「シャボン玉を爆弾に変える能力・・・」
「ちょ・・・ねぇ!ま・・・っ」
 決着は簡単に着いた。
 両者相打ち、気絶から目を覚ましたら自分の恋人を攻撃したと気付く。
 それはやがて後悔の念となり、人生を永久に闇へ葬られる。
「俺は自分の手を汚さない主義なんでね。」
 二人の男女に向けられた水寿の笑顔は、嘲笑以外の何物でもなかった。

「ただいま」
「お帰りなさい、水寿君。」
 義姉の茜(あかね)さんが笑顔で出迎えてくれる。
「今日店主から唐揚げを貰ったから、ソレを活用した料理を作ろうと思うんだけど・・・」
 破片の下敷きになりつつも死守した唐揚げを見せると茜さんは微笑む。
「そうね、今日進路説明会だったらしいけど、どうだった?」
「殆ど一般入試で行けるレベルだよ。心配しないで」
 俺は他の3人とは違い、空白の才を狙ってバトルに参加している。
「今日上司の人とトラぶって・・・謹慎食らっちゃった。ゴメンね?」
 初恋の人が・・・この人が苦労しないように・・・・・・
「大丈夫、その分俺が頑張りますから。」
 「返済の才」を手に入れてみせる。

  トゥービーコンティニュー・・・