風鈴市立火野国中学校、今日はこの学校とで練習試合がある。
 初めまして、或いはこんにちわ。俺の名前は神剣析羅(かばやさくら)、約100人いる能力者の一人です。

  第九話 外へ外へ

「面ー!!」
 抑揚の良い竹刀の音がする。剣道場からだ。
「練習試合、暁中の勝利!」
「ふぅ・・・」
 決着が着くと、俺は籠手を外し、面を取る。
「結構早目にケリが着いたな。」
 同じく能力者・縹水寿(はなだみすず)も大きく息を吐いて言う。
「当たり前だ、今日はお前バイトがあるから早目に終わらせたかったんだよ。」
「おーぉー、怖い先鋒だねぇ。気持ちだけ受け取っとくわ。」
 「あと相手が弱過ぎる」と言いたかったが、敵を増やすのは御免被るから敢えて口に出さなかった。
(ん・・・?)
 入り口から見える人影、何処かで・・・
「・・・あ」
 深緑のツンツン頭で、ボーっとした感じの・・・
「あいつは・・・!!」
 あの時の、能力者・・・植木耕助!
「アイツ火野国中出身かよ・・・。」
「? どうした析羅、知り合いでもいたのか?」
 外を眺めている中、水寿がいきなり後ろから声をかけた。あまりに吃驚したので人じゃないような悲鳴を上げてしまった。
「あぁ、アイツかー。今合同している奴が言うには前の練習で1000メートル走日本新記録を出しかけたって話だぞ。」
「嘘ぉ!!?」
 人って意外な生き物だなぁー・・・
「どうせ暇だし、敵情視察も良いな」
「面白そうだな、俺も混ぜろ。」
 呟きをすぐさま感じ取り、話に入る。目は完全に輝いている。ヤバイ・・・アレはまごう事なく面白がってる知的好奇心状態だ!!
「お前・・・バイトはどうする気だよ!!?」
「安心しろ、影武者を呼ぶから」
 携帯電話を取り出してしばらくの間話し込む。
 話がついたのか、携帯を閉じる。
「よし、んじゃいくか!」
 水寿は俺の手を引いて運動場へ出る。
「ちょ、待て!道着のままでぇー!!?」

 二校は外に走りに行った為、俺達も混ざって走り始めた。道着と言う違和感丸出しの格好で走っていると言うのに誰も指摘しない。知らないフリかはたまた素でボケているのか・・・どちらかは解らない。
 少し後ろの所にいつぞやの青髪少女が走っている。へぇ・・・剣道部じゃないんだ。
 そう言えば「五段」と言っていたのに助っ人にも来てなかったし、独学か?なら尚の事手合わせ願いたいものだ!!
「出たよ、析羅の武術オタクモード・・・」
「何か言ったか?」
「別に」
 前の方から話し声が聞こえる。
 ソレは、一部の人にしか解らない、ある単語があった。
「でも、オレも君みたいに・・・・・・・・・“走りの才”がほしかったな・・・」
 ! 才・・・!?
 そう言うと二人は他とは別ルートを走っていく。
「先行くぞ、水寿!!」
「?どうした?」
 俺は二人の後を駆ける。
 水寿は俺が行った先を見た後オッサンと少女のやり取りを少し眺める。
(結構腕力あるのか?あの女・・・)

 一方その頃、
 影武者に選ばれた副会長・赤杜紋火(せきもりあやか)は店長にビシバシしごかれていた。

  トゥービーコンティニュー・・・