私の名前は湯木邑鼎(ゆきむらかなえ)、今回の番外編の主人公を務める恋する乙女です。
「乙女?」
 相手の名前は神剣析羅(かばやさくら)、一つ年下の中学二年生。
 元は神様を決める戦いで対峙した男なんだけど、強いの何の、其処に惚れて彼を追っかけて転校して、門下生になってまでしたのに、良い返事が来ないのよ。
「そりゃアレだけしつこいアプローチ続けていたら避けるわな。」
「てか元々好みのタイプじゃないだろうし。」
 いちいち人のナレーションにツッコミを入れないで、暁中生徒会の面々!!
「へぇ〜い」
 と、言う訳で物語は始まります。

  番外編 季節は夏だが彼女の心は永久に春(Part1)

「あぁ・・・、さくらん。何でOKのオの字も言ってくれないのよ・・・」
「綽名からして先ず駄目だろう。」
「ソ○ラ○みてーだし」
 乙女の悩みにいちいち口を挟まないでよ、デリカシーがないわね。
「そう言えば・・・お前だけだな、アイツに名前で呼ばれてないのって。」
 唐突に縹(はなだ)君は言う。
 名前?どう言う事よソレ。
 その応えは紋火(あやか)が答えてくれた。
「アイツ、身内か余程馴れ親しんでいる奴でもない限り名前で呼ぶ事ないんだよね。」
 え?
 さくらんに名前で呼ばれている人=さくらんの身内or少なくとも拒絶されていない
 自分はと言うと。
 「湯木邑」
「え?ちょっと待って??て事は私・・・」
「物凄く拒絶されているぞ、お前。」
 認めたくない事を縹君はハッキリと私に言った。
 「物凄く拒絶されてるぞ拒絶されてるぞ拒絶・・・(エコー)」
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「イヤァアーッ!!!」
 私は叫んだ。生徒会室付近にいた人達は「なんだなんだ?」と野次馬根性で近付く。
「オイそれは言い過ぎだろう。」
 紋火は水寿(みすず)に小声で文句をつける。しかし本人はこう言う。
「たまには絶望の底へ突き落とす事も必要だろ?」
 尤もかも知れないがコレは流石に酷い。
「それに・・・」
 少し俯いて水寿は一旦息を吐く。紋火は続きが気になり「それに?」と伺う。
「こうやって絶望を感じている奴を見ると背筋の辺りからこう・・・快感?見たいなものを感じるんだよねぇー、優越感と言うか・・・どうだろうなぁ・・・・・・」
(出た!暁のS!!)
 言い忘れていたが水寿は自覚無しのSである。でなければ「相手の仲間を相手の敵の姿に変える能力」なんて選ばないだろう。
「・・・どれくらい彼に嫌われているんだろう・・・」
 鼎は溜め息を吐いて俯く。
「私が話をしている時目を閉じたり瞬きをよくしてるけど、瞼を細めて瞳を縮小させる事もあるけど、私の駄洒落に笑ってくれるし、私の愛は伝わっている筈!!なのに何で・・・?」
(滅茶苦茶なくらい拒否られてんな、コイツ・・・ッ!!)
「お前ソーシャルスキルってモノ知ってるか?」
 ※ソーシャルスキル・・・相手の気持ちを読み取る能力。別名「社会的技法」。
 ちなみに先程言った行動は全て「拒絶されている」行動です(駄洒落の部分は「面白い事も言ってないのに笑う」)。
「お前は第一に性格の改善から始めなければならないな。」

「でもどんな性格になればいいかしら・・・」
 とりあえず男三人に相談してみる事に。理由は近くにいたし、水寿と紋火は彼と付き合いは長いし。
「まぁ基本はアイツの好みの女になるしかないだろうな。」
「・・・つっても、アイツの好みの女ってどんな感じの奴なんだろう。」
 問題発生。
「アイツ、女好きになった事ないの?」
「ないと思うぞ、昔っから武術とバイト一筋だったから。」
「てかアイツが女の集団に自分から近付く事がなかったよな。会議以外で。」
 どうやら小学校からの付き合いの二人でも、彼が女を好きになった所を見たことがないのだ。
「んじゃぁどうやって奴の好みを探るか。」
 @本人に直接好みを聞く。
 A感性の近い人に好み聞く。
 B彼の好みを推理する。
「のどれが良い?」
 選択肢をホワイトボードに書いて信(まこと)は3人に問う。
「@はちょっと勇気いるわね。」
「A・・・感性が独特だからなぁ、アイツ。近い奴いるかな?」
「Bが妥当かもな、待てよ?・・・広報委員に頼めば@出来るかも・・・」
「もうぶっちゃけ片っ端からチャレンジするしかないんじゃね?」
 信は投げやりにそう言う。
「・・・それもそうね・・・」
 鼎はスク、と立ち上がる。
 目はギラギラと炎が燃え上がっていた。
「片っ端からチャレンジしようじゃない!覚悟しなさい、さくらん!!」
 拳を固め、彼女は覚悟を決めた。

  トゥービーコンティニュー・・・

「続くの!?」
「中途半端だからな」