縹水寿(はなだみすず)、赤杜紋火(せきもりあやか)は中学三年生です。なのであの行事があります。
「今日から二泊三日か・・・」
「そうだなー」
 二人は新幹線の中にいる。いや、正確には彼等二人だけではない。
 市立暁中学校三年生は今日から二泊三日の修学旅行が始まるのである。

  番外編 京都時代劇村能力者(前編)

「しかし、あの二人だけで本当に大丈夫なのだろうか・・・心配だな」
「大丈夫だって、あの二人仕事だけはきちんとやる奴だし」
 「あの二人」とは無論析羅(さくら)、信(まこと)の二年組である。
 「あれ?湯木邑(ゆきむら)がいないじゃないか」と言う読者もいるだろうから言いますが(いるか?)、彼女は未だ暁中に転校していない時期の修学旅行なので彼女はおりません。
 彼女もその時同じく修学旅行ですが、行き先は北海道。彼等の行き先・京都とは正反対の土地である。
:次は、京都〜。京都です。:
「皆降りる準備しろよー?」
 担任の声を聞いて一同は慌てて支度をする。まぁ、この二人は別段やる事もないから受験生らしく本を片手にいただけで片付けもあまりしなくて良いのでさっさと降りた例外者だが。

 京都
「ようこそお来しやす〜、今回町の案内をする事になった魁燕(さきがけつばめ)どすー」
(態々京都弁で話さなくても・・・)
(標準語話せ)
「おぉ、すっげぇ美人!」
「お願いしまーす!」
「後で一緒に写真とってー」
 二人の意思とは正反対の意見を出す3−4男子。各々の一言を聞くと「どうも」と返す。照れているらしく、頬を紅潮させながら。
 ふと燕の視線は一つの方向に行く。
 水寿と紋火がいる、3列目の座席である。流石の二人もその熱い視線に気付く。
「・・・何ですか?」
「あ、いや・・・綺麗な髪と瞳の色をしてますなと思って・・・」
 不服そうに返す紋火に燕は慌てて対応する。
「・・・・・・」
 それを無言で眺める水寿。すると後ろの男女が茶々を入れ始めた。
「初めてだな髪の色褒められたの」
「もしかしたら惚れられたんじゃない?イきなよ、二人で」
「すみませんこの辺りに自殺の名所ありますか?少し逝って来ようと思いまして」
「物凄い質問をサラリと吐いたな、お前・・・」
 紋火の自殺癖が発動して騒動となっている中だったのか、誰も気付かなかった。
 燕が何かを企む様な笑みを浮かべていた事に・・・

「時代劇村、かつての処刑法やら色々なコーナーのある修学旅行生は大体は此処に来ると言う・・・そして作者が修学旅行に行った際このお化け屋敷で死体の人形に躓いてコケたと言うあの・・・」
「サラッと作者の過去をバラすなよ。」
「おーい二人共ー」
 大雑把な説明を終え声のする方向に顔を向けると生徒の一人が「来い来い」と手をバタバタと振っている。
「着替え所ではないか、それが何だ。」
「今無料なんだってよー、どうせだし着替えねー?」
 クラスメートが二人に誘いを出す。
「面倒臭い、断る。」
「外観と違和感あるので断る。」
 二人の答えは同じだった。クラスメートは残念がる。が、その直後ニヤリと着物を持って二人を追っかけ始めた。
「!?」
「なら無理矢理にでも着替えてもらう!!修学旅行に行く時部活の後輩(女子)がお前達の和服姿の写真をくれって煩くてな・・・有料で配る事にしたんだよ!!!」
 「有料」
 その一言で水寿は急ブレーキをかける。そのまま逃げ続ける紋火の襟を鷲掴みにして捕獲する。
「・・・それは幾らだ?」
「い、一枚300円ぐらいで・・・」
「人数は?」
「部活の後輩は10人ぐらい、他に隠れファンとかいるからもっとかも・・・」
 しばらくの間水寿の尋問が続く。
 で、結果。
「良いだろう!その代わり売り上げの4割は俺達に寄越せ。」
 商談成立。
 紋火はもう呆れて物も言えなくなった。

「もーいーかい?」
「「もーいーよー」」
 二つのカーテンを開けると其処には紋付きの様な姿をした水寿と一昔前の洋装の紋火が現れた。腰にはレプリカの刀を携えて。
「・・・ッ 何で紋火和服じゃないんだよー!!?」
「しょうがないだろ余ってた中で自分の丈に合う奴と違和感無さそうな物で選んだらコレだったんだから。言っとくけど洋装ばかりだぞ?」
 クラスメートは少し不満だったが着てくれただけでもありがたいのでカメラで写真を撮る。
 通りがかった暁中女子群は一目見ただけで写真に収めようと血を嗅ぎつけた鮫の如く群がり始めた。
「ハイハイー、写真撮る方は一枚150円だよー。後で購入する方は300円ねー」
 群れの中で水寿のセコイ商談がまた始まる。
「ハイ150円」
「毎度」
 金を支払った後燕は水寿達の写真を撮る。
 その後の表情に違和感を感じ、水寿は睨む。
「お二人さん、話があるんどすが、宜しいどすか?」

 面倒臭いので衣装はそのままで、案内されるがままに二人は路地に着く。
「何の用ですか?なるだけ手早く済ませて欲しいのですが」
「えぇ、直ぐに済みますえ。俊足閃光さん。」
 俊足閃光、、瞬く間にバトルが終了することから総称されている能力者集団。と言うか神剣析羅(かばやさくら)、縹水寿、赤杜紋火、澄飼信(すみかいまこと)の四人の事である。
 その単語を知っていると言う事は、つまり魁燕は・・・
「アンタ、まさか・能力者・・・?」
「ご名答」
 先程撮った写真に光が帯びる。
「魁燕、京都では“現実の獏”の名で知られている能力者どす・・・!」
 光が消えると、二人は容易く膝を付いて前へ倒れ込んだ。
 それと同時に、燕の口元は綻んだ。

  トゥービーコンティニュー・・