掃除の大会で優勝した森と植木は今、賞品を片手に温泉をめざしている。
「なあ森、まだつかないのか?」
「あたしが知るわけないでしょ?」
いつものように怒気を含んだ声で植木に突っ込んでいる。
しかし植木がこう言うのも無理はない。
二人はかれこれ一時間ほど山道?を歩いている…
車も入ってこれないほど山の奥らしい。
「植木!早くきなさいよ、遅いわよ!」
「じゃあこの荷物なんとかしろよ」
森は片手に地図しかもっていないが植木の背には夜逃げ?と思わせるほど大きなリュックをしょっている。
「そのくらい我慢しなさいよ…さぁ日が暮れないうちに旅館までいくわよ」
「おぅ」
植木の気のない返事が静かな山林に響く。
そしてかれこれ三十分ほど歩きやっと旅館に着いた。
そのとき「よう」といきなり声をかけられた……
「佐野!!」
二人同時に声を上げた。
「どうしておまえがここに?」
「はぁ?何いっとんねん?ここはわいが経営してる旅館やで」
「へぇー佐野って旅館経営してたんだ…まあいいや早く宿を案内してよ」
森が催促している。
「あぁわかったわかった、ところでおまえらここ混浴しかないけどよくきたなぁ」
「!!!!!」
二人は同時に顔を佐野に向けた。
「えーそんな事かいてなかったじゃない」
森は怒りだした。
植木は森が怒りだすのも無理はないとその光景をみていた。
散々佐野に森が文句を言ってから。
二人は部屋に案内されて愕然とする…
部屋にベッドが一つしかない(大きいの)
「なぁ佐野この部屋って二人部屋だよなぁ?」
「そやで」
佐野は淡々と答える。
「植木と二人で寝ろっていうの?」
「なんだ森は嫌か?」
(あぁこの天然男はそんなこと聞かれたら嫌っていえないじゃない)
森は口には出さないがそう思った。
「べっ別に嫌じゃないけど……」
「そっかならよかった、じゃあ森、温泉はいりにいくか?」
「えっ?何いってんの植木?」
「だってここ混浴しかないんだろ?」
(あぁそうだった)
「わっわかったわよ、でも変なことしたら殴るからね?」
植木は満面の笑みを見せながら着替えをとりにいった。
「はぁーホント最悪」
森はつぶやいた。
植木は温泉の前で待っていた。
その時遠くから聞き慣れた声が聞こえてきた…
「やめてよ!」
「いいじゃんいいじゃんお兄さんたちと一緒に入ろうよ」
「いやっ…あっ植木!」
「森に触るなぁ!」
チンピラを殴った、数々のバトルを繰り広げてきた植木の一撃は強力なもので一発で気を失ったようだ…
「あっ、そのありがとう植木」
森は林檎のように頬は真っ赤だ。
「別にいいよ」
二人は着替えをすませ温泉にはいった。
「ふぅー」
植木は思わず声を出した、そして森の方をみた。
「みっ見ないでよ」
いくらタオルを体にまいていても露出度は極めてたかい。
植木は素直に(綺麗だ)と思い森を見たまま固まっているといきなりガツッと鈍い音がした
「痛ぇ」
森はいつもより強く植木を殴った。
「見るなっていったでしょ!変体植木!」
「だって綺麗だったんだもんしょうがないだろ」
(あぁこいつは何でさらっといっちゃうのかなぁ)
森はたぶん自分が真っ赤になってるだろうと思った。
・・・・・・・・・・二人は温泉からでて部屋に戻った。
そして他愛もない話を長々と続けたあと疲れからかさっそく寝ることになった。
「絶対近寄ってこないでね……絶対だよ?」
「わかったよ」
(いったい何度釘をさしたら気がすむのだろう)と植木はおもったが何度目かの返事をした。
布団にはいってからもしつこくいってくる森だったがいきなり静かになった。
そう、森が寝てしまったのだ。
植木は一応確認のため「森?」と言ってみたが返事がない。
やはり寝たようだ、そしてその寝顔を遠くからみて(かならず守ってやりたい)と思ったあと目を閉じた……
………………それから何時間がたっただろうピカッとそとが光り森は目を覚ました。
(うそっ雷?)
そして爆音のような音がなったと同時に「キャアァ」と悲鳴を上げてしまった。
植木を起こしてしまったかと思ったがどうやら寝ているようだ。
一応確認のため「植木?」と聞いてみたがやはり返事がない。
内心起きてくれたらいいと思う自分がいたがそんな自分を振り払ってもう一度寝てしまおうと布団を被るが音がなるたび恐怖で声を上げてしまう。
そんなとき
「森?大丈夫か?」
声をかけられた。
「うっうぇき?」
たぶん今自分の顔は涙でぐしゃぐしゃだと思ったが植木の方に顔を向けた。
「こっちこいよ森」
「うっうん」
植木は森をそっと抱き締めた。
「ありがとう植木」
自分も植木を抱き締めた。
「大丈夫だ森………ってあれ?もう寝たのか?」
返事がないところを見ると寝たらしい。
そしてまだ乾いていない涙をそっと吹き額に唇をそっと付けてたあと自分も寝た・・・・・・・・
そして朝。
「おーい朝飯持ってきたでー」
「うっうーん佐野?」
森は答えた、
植木は「あぁおはよう森、佐野」と言った。
「それにしてもおまえらなかがいいのぅ」
「!!!!!」
森は植木を思い切り跳ねとばした
「いってぇ何すんだよ」
「何すんだよじゃないわよ、ずっと抱いてるなんて馬鹿じゃないの?」
「だって森可愛いんだもん」
いつものようにさらりという植木
「ばっ馬鹿ーーーー!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・私があなたと過ごす時間はとっても大切な時間………

fin