アレから何年か経って、人間界に辿り着いた。
 地形からして地獄界とは違う所があったし、文化の違いも様々だから戸惑ったけど、今はそれも無い。
 姉を・・・真久利を見つける為に世界を放浪した。
 言葉、通じないけどね。


   ― 古傷 その2 ―


 日本と言う国に来た。
 地域によって環境も異なり、伝統も違うのはどの国も一緒だな。
 『真久利』はカンジと言うものらしい。
 だからもしかしたら思い当たる節を
 見つけられるかも・・・
「貴様か?・・・天界人と地獄人のハーフと言うのは・・・」
 背後から冷たい声がする。
「・・・だから何?」
 僕は声の方向に顔を向ける。
 そこには少年がいた。
 僕とあまり年端が変わらなさそうな、光を感じない瞳が印象的だった。
「誰、アンタ。」
 少年は答えない。
 気配からすると、天界人か・・・。
 こんな話題は、今じゃしてはならない。
 邪魔者が多すぎる。
「此処じゃ何だから・・・場所変えない?」
 少年はさもどうでも良さそうに、僕の後をついていった。

 人気の無い森の奥。
 此処まで来れば邪魔者も・・・
「此処でいいかい?・・・え、と・・・」
「神谷だ、神谷祐樹。」
 男は無愛想で名乗る。
「そう・・・僕はリローシュ・ギョクロ。」
 それしか名前は無いのだから。
 で、何の用?と僕は神谷と言う少年に聞く。
 彼は答えない。
 一歩一歩、僕へ近付く。
 接近戦か?地獄人には超身体能力がある事をお忘れかな?
 それに僕には、神器もある。
 君の負けは確定だよ、神谷。
 だが、彼の行動は僕の予想を大幅に裏切った。
 ただ、僕の横を通り過ぎるだけ。
 何事もなかったかのように、彼は僕を横切る。
「・・・?何考えてんの、き・・・」
 その直後、身体に異変が起きた。
 いきなり、血が溢れ出す。
 手足腹部、背中、頭部。あらゆる所から血が流れ出た。
 気付けがあらゆる部位に切り傷がある。
「・・・な、何時の間に・・・!?」
 血だらけの腕を、彼は上に持ち上げ
 低く、冷たく、僕に言い放った。
「我々の下へ来てもらおう。リローシュ・ギョクロよ。」
 視界が霞み、やがて僕の意識は途絶えた。


   続く