全てはあの人の為に

 全ては貴女の為に、僕は戦う……。


   貴女の為に


「無様な姿極まりないですね。」
 笑顔で僕は言う。
 僕を見るその人の目は、怯えているようだった。
 きっと、笑顔でいる筈が、目は笑っていないのだろう。
「あ、あぁ…。」
 声が震えている。
 其処までこの人は僕が怖いのだろうか。
 でも、僕の中に渦巻く『何か』が、僕に囁いてくる。

 ソレは、『破壊の衝動』。

「ねぇ」
「は、はい…?」
「貴方を殺したら、姉さん達って喜びますかね?」
「え?」
「褒めてくれますかね?」
 僕は言葉を続ける。
 手には既に、得物のトンファー。
「あ、あ…っ!?」
 一発。
 二発。
 三発。
 四発。
 何度も、何度も。あらゆる箇所にトンファーを減り込ませる。
「が、ごは、げぇ……ッ!?」
 相手は、白目を向いて、ぐったりしている。
「そんな簡単に、逝かないで下さいよぉ…。」
 口元が緩む。
「!! が、ぁ…っ」
 レベル2で、相手の腕を破壊する。
 内側から、外へ。刃物のような激痛と、熱い物が迸(ほとばし)る。
 次第に攻撃箇所を変えていく。
 足、腹、背中。
「あ、お…お許しをぉ……っ!!」
「許しませんよ」
 最後に、頭部と心臓を破壊し、完全に壊した。
 顔と、身体には、大量の返り血。
 その表情はやけに恍惚としている。
「あぁ、また、壊れちゃいましたかぁ…」
 「つまらないですね」と、僕はしゃがんで、動かない体から流れる紅い雫を掬い取る。
「もう少し、僕を楽しませて下さいよぉ………。」
 動きを見せないその頭部を、血塗れの足で踏み潰した。
「…まぁ、いいや。」
 手に付いた血を少し舐める。
 鉄の味が、口内に広がる。
「この事報告して、茜に褒めて貰いましょう…。」

 僕は姉さんの為に戦う。
 でも、まだ見ぬ姉に会うまでは。

 貴方の為に、戦いましょう。

 全てを壊す、殺す、そして 打ち砕く。
 ソレは貴女に愛でてもらう為の、一つの行為……。


   終わり