それは少女だった。
 背丈は確実に紋火を下回り…恐らく析羅よりも若干小柄だろう、夜道でもぼんやりと把握できる金髪は短かった。
 粗方西神山の住人の顔を覚えている紋火は見慣れぬ影に首をかしげた。
 新たに此処へ引っ越してきたものかは判らないが、少女がこんな夜に出歩いているのは危ないだろうと思った紋火は遠くから声をかけてみる。
「おーい、そこの嬢ちゃ―――ん。」
 少女は紋火の声を聞いて紋火を見る。
 水色の瞳は透き通っており、顔も『美人』とカウント出来るほどに整っていた。
「いくらこの地域に警察一人いないからって、こんな所で歩いていたら危ないよ――。」
 少女はまるで話を聞いていないように空を仰いでいる。
「……警察がいないからその分この地域には変質者出没し易いんだからさー。」
 紋火はめげずに話を続ける。
 少女は黙ったままだった。
「―――――もしもーし? 話聞いてますか――?」
 英語で話した方が良かったかな?と紋火は内心後悔する。
 少女は再び紋火の方を見た。
 正確には、彼の手にあるモバイルを。
「――コレは…」
 少女は遂に口を開く。
 やっと反応してくれたか、と紋火は安堵したが、彼女の周囲を取り巻く空気が変わっている事に気付く。

 直後


 紋火の眼前に巨大な弾丸が現れた。

「どぉおっ!!?」
 慌てて紋火は身を翻し弾丸を避ける。
 弾丸は一直線に駆け、背後に立っていた電信柱に直撃する。
 悪寒が背筋を這った。
 蒼褪めた表情のまま、紋火は少女の方を見る。その右手には大砲のようなものが付いていた。
 ソレを紋火は以前見たことがある。
(コレ―――天界人の『神器』!?)
 少女は殺気立っていた。
 理由は判らない、だが、このモバイルが関係あると言う事は突然の出来事に混乱しがちな紋火でも理解出来た。
「ハヤトさんに……何したんですか?」
「はい?」
 ふと彼女の口から零れ出た固有名詞に紋火は戸惑う。
「は、ハヤトって誰」
「とぼけないで下さい!!」
 再び少女は大砲の姿をした神器『鉄』を出す。
 放たれた弾丸をただただ紋火は避けるだけだった。
 そんな中紋火は深い嘆息を漏らしながら
(―――コレって戦わなきゃいけないのかなぁ…)
 思う。


  続くかどうかは不明です