「待った待った!!人の話を聞いてくれ!!」
次々と放たれる弾丸を避けながら紋火は言った。
「何だ!何があってそんな殺気立ってるの!?」
「そのモバイルです!」
やっぱりな、と紋火は思う。
しかし、原因はわかったがどう対処していいのかよくわからない。
「そのモバイルは、ハヤトさんのです!それをどうして貴方が持っているんですか!?」
金色の髪を揺らしながら、弾丸を打ち続ける彼女は言った。
「ハヤトさんに、何をしたんですか!?」
「ちょ、ちょっと待って!」
紋火は静止の声をかけた。その言葉に、少女はピク、と反応した。
「このモバイルは、道に落ちてた。で、これを拾ってどうしようか悩んでいた内に君にあって、今に当たる。」
「ふぇ?」
少女は間の抜けた声を出した。
「じゃ、じゃあ…。」
「そう、全ては君の勘違い。」
少女は、顔を真っ赤にさせて
「ごめんなさい…」
と謝った。
「(いや、ごめんですまないだろ。どうすんだよこの電信柱…)」
と紋火は思った。
「ま、まぁ誤解だからいいよ!」
「…本当にすみません。」
続けて謝る少女は紋火に戸惑いを持たせた。
「え、えーと。君、名前は?」
「ナエです。風野ナエ。」
「風野?じゃあ、これは…」
「ハヤトさんは能力者です。だから、それはハヤトさんのモバイルです。私が、渡しておきます。じゃあ、家に帰りますので。」
そう、ナエが帰ろうとした時
「待って」
紋火が静止の声をかけた。
「何ですか?」
キョトンとした眼で見つめ、首を傾げる。
「あのさ、君、家って遠い?」
「隣町ですけど」
やっぱり。紋火は思う。今この時間帯でこの子1人で帰らせるのはまずい。かと言って隣町は警察がいて、見つかりでもしたら(略)だ。ここは、自分の家にと思ったが確実に引いてしまうこと間違いなし。
ここは、本来の目的地である神剣家に送り届け、朝まで待ったほうが良いだろう。
「此処らへん、君1人じゃ危ないから。でも、俺隣町には出れないし、俺んちは訳ありだし…。だから、友達の家で、朝まで待とうよ?」
ナエは少し考える素振りを見せ、
「わかりました。」
と答えた。
しかし、成り行きとはいえ人の家を勝手に利用するのはどうかと思う。
なので再び紋火は深い嘆息を漏らしながら
(――――すまん、析羅)
思う。