とりあえずコレまでの話を整理してみよう。

  一部で『赤薔薇殺し』と言う異名を持つ暁中生徒会副会長(もうすぐ引退)・赤杜紋火(せきもりあやか)は、妖刀――と言われているが、本当はただ滅茶苦茶 思いだけの刀――『逆月一雫(さかづきのひとしずく)』を持ち主となった析羅(さくら)の元に届けようとしたが、当の本人に「後は任せた」と大量の能力者 を押し付けられ、命からがら逃げ延びたものの、刀を返すと言う本来の目的を忘れてしまう。
 其処で彼の実家に送り届けようとした道中、誰かのモバイルが落ちていたため、広い、どうしようかと思案していた所で金髪の少女・風野(かぜの)ナエと遭遇。彼女はそのモバイルが自分の兄・ハヤトのものだと気付き、不意打ちをかける。
 何とか誤解を解いて一段落つくも、今は夜。変質者が出る可能性はあるので女の一人歩きは危険だろう、かと言って自分もまだ夜道を保護者ナシに出歩いていい歳ではない。目的地である析羅の家に泊めた方がまだ安全だと判断した紋火は彼女を道場まで送り届ける。
 神剣(かばや)家の住民に交渉をしてナエを一晩宿泊させる事に成功、帰ろうと思ったら長男の蒼伊(あおい)に「お前も泊まってけ」と誘われ、今藤袴(ふじばかま)組はゴタゴタの真っ最中なので言葉に甘えて泊まる事に。
 風野家に何て説明するべきかと言う話し合いの結果、「ドがつくほどのシスコンである兄に言ってしまえば自分の命が危うい」という話に行き着き、互いの秘密にすると決まったが。
 今此処にソレを確実に吹聴しそうな危険人物が降臨した所で


 意外にも長く続いているリレー番外『落とし主か交番を求めて』、スタートです。


 赤杜紋火は本日何度目か判らない溜息を吐いた。
 此処は神剣家本宅の中で一番広いと思われる客間の片隅、其処に敷かれた一枚の布団の上に胡坐を掻いて紋火は俯いていた。
 額から頬へと、冷や汗が一筋流れ伝う。
「―――――終わった。」
 「何と言うか、色々と終わった」とぼやいた後、
 また、深い溜息を吐いた。




 用件をちゃっちゃか済ませて水寿(みすず)は帰っていった。
 ただ一言
「お嬢よ、」
 水寿が嬢ちゃんことナエに
「男と言う生き物は餓狼だ、せいぜい、喰われないように気をつけろよ?」
 「主に、貞操面をな」と、悪辣な笑みを浮かべて余計な一言を言わなければ。




(アイツ本当の本当にドがつくほどのS(サディスト・その上シスコン)だな…まぁ、金がない分まだ『アレ』よりかはマシかも………)
 脳裏に鮮明な過去の記憶が蘇る。

 @水寿に『精神修行だ』と千尋の谷(約20m)から突き落とされる
 Aアレに家族規模の壮大なドッキリ(爆発などのスタント込)を仕掛けられる
 B水寿が挑発した敵(ナイフ、鉄パイプ所持のチンピラ48名)を倒す羽目になる
 C射撃の的にされかける
 以下省略

「……………前言撤回、二人とも大差ねぇ。確実にタッグ組んだらオレ(と析羅)の身がもたねぇよ」
「『二人』って、誰と誰ですか?」
 声にならない叫び声を感じた。
 まぁそれはオレによるものだが。
 見れば隣にちょこんとナエが正座している。
 風呂上がりか、金髪がしっとりしている。着ている淡い空色の浴衣は押入れから引っ張り出してきたのだろうか、にしては小奇麗な感じがする。多分定期的に析羅が掃除洗濯しているからだろう。
 ………何でオレ冷静に観察してんだろう…
「てゆーか、何でいるの?」
 確か女性陣は門下生部屋にいた筈だけど。
「はい、この家の人が『折角だから話とかして親睦深めとけ』と言うので」
 「玉の輿に乗れるぞとか言われました」とナエは続けた。

 ――玉の輿って、オイ…。

 本当に何度目か判別つかない、溜息が自然と零れ出た。


  意外と長く続いている番外。
  こんなに続くとは自分でも思ってませんでした。
  本当に余談ですが、紋火は結構株などで荒稼ぎしているので貯金は凄まじい額(海外通貨込)であるという設定があります。