オレはコイツと一緒にハンバーガーのセットを買った。
 隣にいるコイツはモグモグとハンバーガーを口に入れる。オレも過去にハンバーガーを奪われた記憶があるので先に買ったハンバーガーを頬張った。
 コイツはジッとオレの方を見る。いや、正確には俺が手にしているハンバーガーを見つめている。
「・・・何だよ」
 視線を感じて、オレは口を開く。まぁ、大体予想は出来るが。
「ハイジっちのハンバーガーって、どんな味?」
 予感的中。
「期間限定の照り焼き」
「ふぅーん・・・一口良い?」
 これもまた予感的中。ったく、コイツの頭の中はハンバーガーしか興味ないのか!?
「ホラよ」
 不愉快だが、オレは味見出来る様にコイツにハンバーガーを差し出す。
 が、コイツはオレの思わぬ方向に顔を向けた。
 その直後に口許に感じたやわらかい何か。
 傍から見ればソレはキス以外の何物でもなかった。ソレはほんの少しの時間だが、俺の顔を赤くさせるには充分だった。
「・・・っな、何するんだよ!?」
 喋ってる間でも、まだ熱が冷めない。
「何って、口移しで味見したんだけど」
 コイツは平然と答える。何の意識も無くやったのかコイツは!?
「結構美味しいね、今度コレ買おうかな。」
 そう言うと立ち上がり、俺に背中を向ける。
「先に店の方帰ってるねー」
 そう言ってアイツはオレの前から姿を消した。

 時刻はもう5時を迎える。だが俺はあの場を離れていなかった。
 口許に触れると、まだ熱の余韻が残っているのが判った。
「ガキが・・・ッ!!」
 ・・・・・・このまま店に戻ればナガラの野郎あたりが冷やかすだろうから、もうしばらく此処にいよう。