森「好かれる才が無くても、嫌われる才もない・・・。」
今植木と並んで歩いている森は、数日前の海水浴で鈴鹿が喋っていた言葉が頭の中でグルグルと回っていた。
『植木君には゛女子に好かれる才"が無くても、゛女子に嫌われる才"が有る訳じゃないですから・・・』
新たに復活した、「才」の問題。森はこの言葉がいつもエコーしている。
森「才能なんて、努力しだいでどうにでもなる事なのかなぁ・・・。」
『俺が才をうしなってから、人が一回聞けば分かる問題も百回聞かなきゃ分かんねぇ。だけどその代わり百回聞けば事足りる。』
森が植木と会ってすぐ、植木が言った言葉。
植木の正義で女子に好かれる才や勉強の才を無くしても、植木は植木のままだった。
泣いたりもしなかったし、怒ったり八つ当たりすることもなく、いつも通りだった。
森「ねえ植木、あんた・・・」
植木「グオォォォ〜・・・スピュルルル〜・・・」
何か叩いたような鈍い音が夕空に響いた。
森「・・・ったく。何でアンタは授業中寝てたのに道でも歩きながら寝るのよ!」
植木「ん、ああ。悪い・・・。んで、何聞こうとしてたんだ?」
森「・・・・やっぱいい。」
植木「ふーん。」
森「(・・・『どうしたら才が減ってもそんな風に何も変わらないでいられるの?』なんて、聞けるわけないじゃない。)」
心底、森は植木がうらやましかった。
「正義」という物のために、自分の才や、時には自分の命まで投げ出せるその勇気が羨ましいのである。
植木のマンションに付き、森は買い物に行くために植木と別れようとしたとき・・・
森「そういえば植木、アンタ能力で他人傷つけてないでしょうね。」
植木「最近は使ってねえぞ。」
森「よかった〜・・・。もう能力者バトルは終わったんだから、才を手に入れる機会は無いんだから使わないでよ!?」
植木「ん。」
森「から返事すな!」
植木「・・・・お。」
森「?」
植木の目線の先には、誰か駐車でミスをしたのか、マンションの垣根が根本から3本折れている。
二人は周りをキョロキョロと見回し始めた。ゴミを3つ探すのだ。
植木のボランティア活動には、森も強力しているらしい。
そのへんに落ちてたスーパーの袋を丸めて、袋の中のレシートを出してつぶして、空き缶のプルタブを缶からはずして・・
植木「ゴミを木に変える能力!!」
緑色の光に癒されるように、3本の木は元に戻った。
その時、後ろから・・・
          バサリ・・・
植木&森「!!?」
???「じ・・・じ・・・」
   源五郎「事実は小説よりも奇なりだ〜!!!」
二人の背後には驚きのあまり買い物袋を落として目を輝かせている植木の父、源五郎の姿があった。
源五郎「な、なななな何だ今のは!前に言ってた耕助の超能力か!?むぅ、良く見れば前に見た天ぷら獣の腕輪も着けてるじゃないか!!?今の木はどうやったんだ!!?天ぷら獣はいつ帰って来てたんだ〜!!?」
森「落ち着いて下さいオジサン!!」
テンコ「天ぷら獣じゃない、天界獣だ!!」
植木「お、父ちゃん。ただいま。」
森「アンタは何で平然としてられるの!?」

     さて、源五郎の珍しい物好きの性格は
         どこまで二人を追いかけるのだろうか?

             続く。