「ハヤトさーん。ご飯ですよー?」
風野ハヤト、年齢13歳。このままリアルでいくと14歳になるのだが、リレーがあるのでそうも行かない。
「ほーい、まってろナエ。」
ぬぅぅぅぅぅ。と、伸びをして、ごろごろと部屋を転がる。
で、箪笥に頭をぶつける。ぃってぇぇぇぇぇぇ。と頭を抑えながら、数十秒。むくりと立ち上がり。
「よし、目覚まし完了。」
風野ハヤト、プラス思考。
ドアノブをひねり、ドアを開け、階段を駆け下りる。
最後の4段あたりでジャンプし、よし、百点満点。と明らかにヒイキな自己評価をつける。
「バカなことやってないで、早く来てください。」
リビングからひょっこりとエプロン姿の妹が顔を出し、お玉を持ちながら呆れ気味に言ってきた。
「お餅、いります?」
「いやいい。あの後に来る僅かながらの苦味が一番嫌だ。ごはんの時は甘いのに。餅つくったやつを今すぐぶん殴りたいぐらいだ。」
あはは・・・・と苦笑いを浮かべるナエを横目に
「他に何がある?」
と尋ね、聞いたほうがバカだった、と思う。
「かりんとうとシュークリームです。」
と返ってきたのだから。ってか、朝からそれかよ?
「んー・・・・・。じゃ、かりんとう。」
「シュークリームはあげませんからね?」
いらねぇよ。と、返事を出し。三十秒経ったくらいに、かりんとうの入った袋が手元にポン。と放り投げられた。
「じゃ、食いながら散歩して来る。」
「食べながら行ったら行儀悪いですよー?」
「元旦の朝っぱらから洋菓子食ってる奴が言うなよ・・・。」
えへへ・・・。と、照れた真似をする妹に、別に褒めてないからな。と忠告をしとく。
「あ、これ。渡しときます。」
ん?と返事をして、その袋を受け取り、あぁ、お年玉かと、その物体を確認する。
「じゃ、行ってくるわ。」
「行ってらっしゃい。」
欠伸をした後に、妹にひらひらとてを振り、出発する。



隣町ぐらいに来た時、五月蝿いくらいの怒鳴り声が聞こえた。

「よし、お前等いっぺん歯ぁ食い縛れ!」
元旦から何事だよ。と思いながら、どこか聞いたような声だな・・・と思う。表札を見ると「神剣」と書いてある。
あぁ、多分お年玉だな。大人が子供にねだっているのだろう。
あいつの突っ込みスキルを見ればそれ位はわかる。
「何でだよ新年の楽しみっつったらコレだろ!? ソレ奪うって何様よお前!!」
「何処の世界に年下にお年玉ねだる大人がいる!!」
ホラ。面倒だなぁ。このままじゃ近所迷惑だし。
「おっじゃましまーす。」
俺が今年初めて犯した犯罪は住居侵入か。
『此処にいる!!』
「3人揃って断言するなダメ大人ーズッ!!!」
まぁ、尊い犠牲と言うことで。
怒鳴り声のするほうに進み、ガラリと扉を開ける。
「お前ら、うるせぇ。」
「何がだ!!!・・・って風野。」
丸い目で俺を見た。犬猿の仲?みたいな俺に元旦にあうとは思わなかったらしい。
「あなた達もうるさいですよ?いい大人なのに。お年玉ならあげるから、黙ってください。一人一万でいいですか?ほら。」
ひらひらと舞い落ちる一万円を三人は見事にキャッチする。
仕込めば稼げるんじゃないのか?神剣。

「・・・すまない、風野。」
「気にすんな、お前の家を百鬼夜行で壊そうと思ってたのに比べえれば安いもんだ。じゃ、俺帰る。」
「あぁ、気をつけろよ・・・・。」
わかってる。と歩きながらいい、風野家に帰った。


「お帰りなさい、どうでしたか?」
「ナエ、お年玉、可愛そうな人にあげたからなくなっちゃった。新作のゲームが買えん。」
「それだけ買えればいいんでしょう?なら、買ってあげますよ。」
「あぁ、サンキュ。」
これで、元旦の午前中は終了した。


おまけの神剣家

「「「析羅!お前、あいつと付き合え!大金持ちだぞ!」」」
「ふざけんな!俺はゲイじゃない!!ていうかお前らが真面目に働けばいいだろ!!!」
「「「うるさいな。お前が働けばいいだろ!!!」」」
「お前ら・・・それは自分が働いてから言えーーー!!!」