まるで、侵食。
少しずつ心が薄桃色に染まっていく。
それは色褪せることなく。




いつからだろう
彼女が気になるようになったのは

今まで感じたこともない、この感情

いつからだろう
意味もなく彼女を愛しいと感じてしまうのは

なんだか変な、感じ


いつから、だったかな・・・・・




愛 し さ 。



<ライルside>

「ライル君。
こんなところでなにしてるの?」

「・・・鎮紅」

一人縁側で腰掛けていた俺に、鎮紅が話しかける。
彼女は俺のすぐ隣にすとんと腰掛けた。
昔の彼女には有り得ない行動だ。
この触れそうで触れえない距離が異様に歯痒さを思わせる。


「鎮紅こそなんで来たんだ?」

「まずは質問に答えるのが礼儀でしょ?」

「・・・俺は静かなところに来たかっただけだぞ」

中は騒がしいから、と付け足すと
ふふ、と彼女は笑う。
そんな微笑みも、
なんだか可愛く思えてしまったことは秘密で。

そっちは?と聞くと

「ライル君と話したくなって」

なんていうから、一瞬驚いて、
それでも心底では少し胸が高鳴って。
なのに彼女はおかしそうにくすくす笑って

「・・・なんて、嘘ついてみっちゃったり」


・・・・ガーン

そういう嘘は勘弁してくれ
嘘って分かった時がものすごくつらいんだぞ

「私はねぇ、星を見に来たの。
今日は一段と綺麗らしいのよ」

そんなの知りもしない彼女は
そういい空を見つめる。
今更だけどやっぱり天然だな。

確かに今日の空は綺麗だった。
ひとつひとつの星が消えないように懸命に輝いて、
存在を示しているかのよう

ずっと彼女を見ていたら、彼女がこっちを見てきて
なんだか見つめ合っているみたいで恥ずかしくなって、
つい目をそらして。

「あぁ・・・うん。綺麗、だな」

「ふふ。ね、綺麗でしょ」

何か悟ったのか、彼女はおかしそうに微笑む。
それから二人で暫く空を眺めていた。
俺は彼女との落ち着いた時間が好きだ。

「ライル君は」

いきなり話しかけられて、少し驚いた。
また見ると、彼女はまた星を眺めていた。
そして口を開く。


「・・・ガルシアさんが見つかったら、
 イエズス会に・・・戻っちゃうの?」


寂しそうな顔が見えた、気がした。

鎮紅はそんな表情を隠すかのように、
ライルとは逆の方に視線をやる。
なんだか・・・
切ない。

でも、まだ、

「・・・よく、わからない」

イエズス会にもどるべきなのか
此処に残り暮らし続けてもいいのか

「・・・そう」

もしいなくなったら寂しくなるわね、と
呟いた彼女は微笑む。
心から笑っているかどうかなんて、
俺にはすぐわかった。

「・・・悪い」

「いいのよ、どうするかはライル君の自由だもの」

彼女のそんな笑顔を見るのは、
つらい


そっか



俺は鎮紅が好きだ






<鎮紅side>

私は、いつからかライル君が好きになってた。
人が信じられなくて、疑いしかしなかった私に、
彼は信じることを教えてくれた。

初めはこの気持ちに気付かなかった。
人の手によって癒えない傷を負わされた私に、
人を好きになることができたなんて

でも、この感情って、なんて素敵で、つらいもの―――――




縁側でライル君を見つけて

「ライル君。
こんなところで何してるの?」

「・・・鎮紅」

彼がこちらを向いて、そう言った。
私はライル君の隣に座って、彼を見つめる。

「鎮紅こそ、なんで来たんだ?」

「まずは質問に答えるのが礼儀でしょ?」



二人で星を眺めてた。

私は彼とのこんな安らかな時間が好き

「ライル君は」

私が話しかけたら、彼は少し驚いてこちらを振り向いた。



きっと、
彼は、イエズス会に戻るだろう



彼にはやらなきゃならないことがたくさんある。
私にはよくわからないけど
それらは、きっと簡単なことじゃない。

暫くの間、いや
もしかしたら、もう二度と

彼に逢えなくなってしまうかもしれない


逢えないなんて 嫌、 一緒にいたい


でも、私に彼を留まらせる権利はない
彼の意思を崩す自信もない

私の想いを伝えたら、優しい彼はきっと、
困ってしまうだろう

伝えられない、なんて。
なんて哀しくて、切ない――――




募る想い 儚い夢

それは心を犯す、侵食


§あとがき§
意味フです、無駄に長くうっとうしくてすみません;;
もう投稿はしないようにします!