得体の知れない黒い塊があたしを狙ってる。塊からたくさんの手が伸びてきてそのうちの一本があたしを掴んだ。塊は大きく口を開いて・・・「いっ・・・いやぁぁぁぁぁぁぁっ!」
自分の叫び声であたしは目を覚ました。「また見ちゃったよ・・・。あの夢。」あたしの名前は植木あい。あたしの夫の植木耕助は会社の上司がため込んでいた仕事の手伝いで2週間の長期出張中。今やっと1週間が過ぎたけれど、耕助が帰って来るまであと1週間もある。独りで寝る寂しさは悪夢を呼び、個々3日はろくに寝れてない。あたしの体力はもう限界だった。「耕助・・・っ早く帰ってきなさいよっっ!!!」この家も、この部屋も、あたし1人じゃ広すぎるよ。目の前が涙でぼやける。1人で寝られない。誰かのぬくもりを感じたいよ。お願い。早く・・・早く帰ってきて・・・・・・
ぎゅうっ。突然背後から誰かにきつく抱きしめられた。
「泣くほど寂しかったのか?」 
この声は・・・「耕助っっ!!」あたしが振り返るとそこには耕助がいた。
「ただいま、あい。」「耕助ぇぇーっっっ!」
あたしは耕助に抱きついて泣きじゃくった。「予定より早く仕事が終わったんだ。」そう言った耕助は笑っていた。あたしの記憶はそこで途切れた。




「あい?あぁ、泣きつかれて眠ったのか・・・。」
オレはあいを抱き上げてベッドに寝かせた。 
「テンコ、いるか?」「おうよっ。」
ベッドの下からテンコが這い出てきた。実はオレは、密かに天界と連絡を取って2週間だけテンコを借りていた。あいに何かあったときのために。 
「いやぁ大変だったぜ、耕助。あいつ、夢の中で耕助を呼んで泣くんだよ。3日ぐらい寝てないぜ。」「・・・そうか。ありがとな、テンコ。」「おう。またな。」
そしてテンコは天界に帰っていった。オレはあいの髪をなでて言った。「寂しい思いをさせてごめんな。」 
すやすやと寝ているあいの顔は微笑んでいた。

あとがき
植森初です。つたない文ですが頑張りました