これはあるパン屋での出来事。
「何やってるんだーーーーーーーっ!!??」
朝っぱらからご近所迷惑この上ない大声を出している少年、ライル・エルウッドは
目の前に立ちはだかる三人の姿を見てこのような状況になってしまった。
三人と言うのは言わずと知れた、突進少女薙刃と薬を作るのが得意(?)な迅伐と役立たずと有名な鎮紅の三人のことである。
「いいからそれやめんか!!!!さっさと着替えて来い!!!!」
「えぇ〜〜おもしろいのに〜〜」
「そうよぉ私がせっかく作ったんだからいいじゃない♪」
「・・・着心地はいいの・・・」
「そーゆー問題じゃないわッ!!!!」
四人が喧嘩しているのには鎮紅の作った服に問題があるようだ。
確かに来ている客は何か不思議なものを見るかのようにこちらを見ている。
ライルにとってはこの視線がつらくてたまらない。
おかげで胃炎になってしまうんだから相当厳しいものなのだろう。
そこにタイミングよくやってきたのがアルドだった。
「おはようございますー先輩」
「あ、アルドおはよー!!見て見てー鎮紅が新しい服作ってくれたんだよ!!」
「着心地もいいの・・・」
「ははぁそれはすごいですねぇ。で、これは先輩の趣味ですか?この」
アルドは笑顔で言う。
「メイド服は」
「違うわーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!」
そう、喧嘩の原因はなんと三人の女性陣が身に纏っているこの西洋の服だった。
「だから鎮紅が作ったんだって言ってるだろ!!!!俺がパンを焼いてたらもう着てたんだよ!!!!」
薙刃は嬉しそうにスカートをひらひらさせて遊んでいる。もういろんな意味で危ないったらありゃしない。
必死で着替えるように説得しても向こうは全く折れてくれそうにない。
ライルは(ある意味)パン屋の信用にも関わるため、早急に通常通りの服装の着替えてほしいと願うばかりだ。
しかしアルドは、やはりというか、そんなライルの考えを覆すばかりか三人の味方についてしまった。
「ふっ・・・これはいい機会ですね。三人がやる気ならそれでいいじゃないですか。
これで某団体も喜んで資金援助(?)してくれますし」
もちろん迅伐のためにだが。
「よかないわッ!!!!!いーからお前らは早く着替えて来い!!!!」
ふー、と溜め息をついたアルドは、どこからともなく大きなツボを出した。
「おお、こんなところにあの名匠が作り上げたといわれる最高級壺(第二段)が・・・いやーさすが、艶が違いますね」
「う・・・・っ(汗」
いつもの手で一旦気が揺らいでしまったライルだったが、気を改め頭を軽く横に振ると、我慢をして叫ぶ。
「今回ばかりはダメだ!!!!!」
「そうですか・・・ならしょうがないですね。
此処に入っている最高級の梅干も一緒に川に捨ててしまいましょうか」
「ちょっと待ったーーーーーーーーッ!!!!!!!」
結局ライルは、再び欲に負けたというレッテルを貼られたのであった。
続く・・・