「あ・・・」
 ふと、店の掃除中天井を見上げボーっとしている。
 彼の名は植木耕助。繁華街と言うところに来て、メガサイトを目指している途中。ふと、三界にいる仲間達の事を思い出した。
「彼奴らって・・・」
 いつものボケた表情とは裏腹。とても寂しそうな顔をしている。
「どうした。植木」
 そう呼びかけてきたのは繁華街で出会った少年ハイジ。
「おぉハイジ」
「おぉってな・・・」呆れた顔をしている。
 ハイジは話を続けた。
「っで?似合わない顔してどうしたんだ?」
 ハイジにしては優しい言葉だ。
「ん?いや・・・な?」
「な?って言われてもな・・・」
 まァ話したって別に何もない・・・でも、オレの好きな奴まではさすがに言えねェよな。などと思いながら、ハイジにオレの過去を話してみた。
「オレは三界で仲間がいたんだ・・・」
「そうなのか・・」
 興味深そうに聞いているハイジが何かしらおもしろかったが、まァ笑ったら怒られるんだろうな。などと思いながら続けた。
「オレがこっちに来る決意した時な、オレの仲間の一人はまだ記憶があったから、ついてくるって言ってきたんだ・・・」
「っで?そいつは?」
 少し苦笑いをし、オレは言った。
「おいてきた・・・」
「よかったのか?」心配そうな顔をしている。
 そう・・・良かったのだろうか。今でも思っている彼奴を繁華街に連れてきたら、きっとオレの前で記憶を消していただろう・・・。
 オレは目の前で好きな奴に名前を忘れられるのが怖かったんだ・・・。
 そうか・・・オレは・・・。
「おい」
 少しキレ気味なハイジが目の前にいた。
「な・・・なんだ?」
 キレ気味ハイジに後ずさりしながらも、一応話を聞いてみた。
「なんだ?じゃねぇよ。寂しそうな顔しやがって・・・」
(そうか・・・心配してくれて)
「ありがとな・・・」
「ハァ?」
「いや・・・なにもない」
 そうだ・・・今はこいつらが・・・
「羊飼いさんお仕事終わりました?」
 こいつらが今はいるんだ・・・ここではこいつらを守ろう。
 森・・・絶対オレはお前のところに帰るからな・・・。
 彼奴らはいつもオレの中にいる。彼奴らに記憶が無くともオレには有る。だからオレは今ここにいるんだ・・・。
「みんな・・・ありがとう」
「お前。また変なこと」
 そう、オレは今ここにいる・・・。
 オレの存在を知っている奴も居る。今のオレの居場所。
「これからもよろしくな!」
「お前。頭いかれてんのか?」
「そ・・・そんなことな――――」
「ずっと・・・ずっと仲間に決まってるだろ!」
 意地っ張りハイジの精一杯の気持ちとして受け取っておこうかな・・・