夕日が傾いてきたころ、まだ校内のクラスには
人がいた。森あいと何人かのクラスメイトで、
勉強をしていた。ただしくは補習とゆうものだが・・・




殆どの教科を完璧に出来る生徒は少ない。
必ずしも苦手教科は出てきてしまう。
その苦手が増大してしまうものは、こうして補習を受けるのだ。




森は大部分を終了し、時計を見るとまだ随分時間を残していた。
視線を時計から校庭に向ける。
校庭ではさまざまな部活動が行なわれていた。
サッカー・野球・ソフト・テニス







そして、陸上部。






(植木頑張ってるなー)
植木がみんなと一緒に走っている。
その表情はやはり、楽しそうだ。




能力者バトル・キューブ争奪の全ての戦いを
繰り広げてきた植木。
もう、こういった争いはないだろう。
二人で一緒の高校に入ってからも、
二人はいまだに中学校時代のように仲良くやっている。




植木は陸上部、森はバレー部に入っている。
一学期もあっという間に、テストなどを向かえ
夏休みもすぐそこだ。
その最初のテストで不幸にも森は赤点を取ってしまったため
現在、補習=追試を受けている。




植木は補習はない。しかし決して植木が森よりも
合計点数がよかったわけではない。
殆どの教科が赤点ギリギリでなんとか凌いだと
言った感じだった。
森は総合的に平均点上下の点数だったのだが、
苦手な教科が引っかかってしまったので
このような始末だ。



「よし、終りだ」



先生の声とともに残った生徒は、シャープペンやら消しゴムを置く。
後ろから、答案が集められる。
「ふーっ」とため息をつく。
やっと終わったという開放感がある。
同時に夏休みが近づいてくるという、楽しみ。



教室を出て帰路へつこうとする。
しかし植木と帰りたいと思い、校門前で待つことにした。
殆どの部活動が用具を片付け始めているため、
陸上部ももう終わっているはずだ。

(あ、来た!)

殆どの生徒が帰った後でやっと植木が出てきた。

「植ー」
「あの、植木くん!」

植木が出てきたところに一人の少女が出てきた。
隣のクラスの女子である。
かなり男子から人気で、誰が好きなのかと噂されるほどだ。
(ま・・・まさか・・・)
最初はまさかと思っていたが、
それは実現してしまう。



「わ・・・私・・・」
「うん?」
「植木くんのことが好きです!植木の走っている姿も笑っている顔も
全部が好きなんです。だから・・・だから私と付き合ってください!!」



少女が植木に告白した。
それを聞いていた森はショックを受ける。
数々の才を失った植木も必死になってカバーしてきて、
走るのも平均タイムに近くなってきた。
テストも赤点を回避できるまでになった。
その一生懸命な姿を見れば、誰もが感心するかもしれない。
その姿に引かれた人が告白するかもしれない。
その引かれた人が、自分自身だと森は思っていた。

そんな時、パリーンと植木たちの上にあったガラスが割れ
二人をめがけて落ちてくる。
おそらくボール遊びをしていた生徒が割ってしまったのだろう。



「きゃあ!」
「危ない!」



植木が少女の上に被さるように立ち尽くす。
ガラスの破片自体は少なく、細かいために
植木の学ランの上に落ちただけで、二人に怪我はないようだ。



「大丈夫か?」
「あ、はい。ありがとうございます」



ガラスで割ったであろう生徒達が植木たちに近づき
あやまっている。





森の頭の中でさきほどの言葉が
何度も何度もフラッシュバックされる。





(危ない!)
「いや・・・」
(大丈夫か?)
「いやぁ・・・」
(ありがとうございます)
「いやぁ・・・」






(ありがとうございます!)
「いや!」




森は家に向かって走り出した。
とてつもなく、悲しかった。

今まで植木は自分だけを守ってくれるものだと思っていた。
どんな戦いの中でも植木は自分を守ってくれた。
その背中はいつも自分の前にあった。
だが、今は違う。
その背中は自分とは違う少女に向けられている。



「はっ・・・はっ・・うっ・・・」




涙が少し入り混じった声で森は走る。
夕日が沈んでいき、暗くなるに連れて
森の心も暗くなっていった・・・・・・・