学校から涙ながらに走り続けた森は、そのまま家に帰り自室に入る。
へなへなになりながらも、ベッドの上に倒れる。









まだ思いが揺さぶられている。
あの彼女が口にした言葉――




(ありがとうございます!)









植木が彼女にかけた言葉――




(大丈夫か?)









どれもこれもが、森の胸に深く突き刺さる。
植木は自分だけを守ってくれるものだと信じきっていた。
これまでの戦いだってそうだ。




能力者バトルの時は、何度も死にかけ所を体を張って助けてくれた。
キューブの時だって泣きじゃくっている自分をよそに、
単身異世界へ乗り込み、キューブを開放してくれた。




(私がいつも植木のそばにいる――)




だから、植木のどんなことも知っていると自負していた。
走っているところも、怒っている顔も何もかも




(私の方が・・・あんたなんかよりも、ずっと植木の事しってるわよ!
ずっと・・・ずっと私の方が・・・・・・!!)
森はここで自分の中にある、おぞましい感情に気づく。









彼女に向けられた、嫉妬・憎悪
植木に対しての独占欲・・・




自分が情けなくなってきた。
植木は彼女を危険から守った。
それ自体植木が自分らしさを発揮したことだ。
にもかかわらず、自分はそれを否定している。














彼女を嫌うと同時に植木を拒絶していた・・・









また目から涙があふれてくる。
いくら拭ってもとまらない・・・




「何なのよ・・・私は・・・」




わからなくなっていた。
彼女のこと、植木の事。
そして自分の事。




「わかんない・・・わかんない!」









流れた涙は少しづつ、枕をぬらしていった・・・