複雑な思いと足取りで森家にたつ植木。
勇気を出すというよりは疑問の手でチャイムを押す。
何秒か後に歩いてくる音がしてドアが開く。
開いた人物は森ではなく母親だった。




「あら植木くん、久しぶりね」




久々にあった森の母と話しこむ植木。
世間話もそろそろに森の事を聞き出した。




「あい?また帰ってきてないのよ」
「そうですか・・・」




何の手がかりもなく森家を後にする。
とりあえず森が行きそうな場所を回る。
まずゲーセンはないだろう。
じゃあメガネ屋か?
もっとなさそうな気がしてきた。
平日に行くところではなさそうだ。
文房具店というのが打倒だろう。
おそらくだが・・・




さっそくこの街で大きそうな文房具店に足を運ぶ。
だがいない。しかしここだけとは限らない。
違う店にも足を運ぶ。だがいない。
いないだけならまだしも、足を運ぶだけで
そこにいる女子中学生やら高校生からの視線を浴び続ける植木。
だんだん恥ずかしくなってきたため、3軒目でやめた。




近くの販売機でジュースを買う。
随分歩いたため体が水分を求めている。
勢いよくジュースを飲みだす植木。




一休みしようとついたのは公園。
こんな所にいるわけがないと思いつつ、
森探しと休憩の意味を込め公園に入る。
と思ったら森がいた。

(まさか本当にいるとは・・・)

驚く植木。植木はブランコに乗っている森の近くに行き
自らもブランコに座る。




「う・・・植木?」
「よっ!」




森は下を向く。植木も気まずい。
だが森の最近の様子がおかしいという本来の
目的を思い出し森に訪ねた。




「なあ森」
「な・・・何?」




植木は森に聞いた。最近の様子を。
だが森は口を開かない。




「どうなんだよ?」
「別に・・・植木には関係ないじゃん」
「関係なくないだろ!」
「どうして」
「どうしてって・・・」




思わず声がつまってしまう植木。
どうしてって・・・
それは決まっている。森が好きだからだ。
今までは「仲間」だからという理由があったかも
しれないが最近は違う。
森が好きだから気になる。
心配になる。




「私のこと気にしてる暇があるなら、あの子とでもみてればいいじゃない」
「は?」




森が走り出した。
思わず植木も走り出す。
昔なら追いつくか追いつけないか危うかったが
最近では高校で走りこんでいるので簡単に追いつける。
走りながら森の手を掴む。




「ま、てよ!」
「は・・・離して!」
「さっきのは・・・」
「離せー!」




おもいっきり手を振り払った森。
さすがに植木もそれ以上はできなかった。
植木は森の目から涙が出てくるのが見えた・・・




森はそのまま走り出してしまった。
植木は追うことなくただ立ち尽くしていた・・・