「馬鹿な・・・あの森っていう子も職能力を? しかも効果紋まで・・・」
 
ナガラは驚きと感嘆の声を上げた。
驚いている植木たちを元にボスが口を開く。
 
「まぁ、ここまで来たご褒美にその剣の能力を教えてあげようか?」
「何?」
「なめてんのかてめぇ!」
 
ハイジが大声を上げる。
そんな声を気にも留めず、話を進める。
 
「その剣はね、あらゆる物質を一刀両断することが出来る。まあ一刀両断できるのはその剣で斬れる範囲の大きさだけどね。」
「何て効果だ・・・」
「うーん。あれを攻略するのは、ちょっと時間がほしいよ・・・」
「まぁ斬れないものが2つある。1つは、生物の身体。これはさすがに一刀両断できない」
 
その発言に少しは胸をなでおろす一同。あれで斬られて体が真っ二つというのは御免だ。
 
「そして、もう一つそれは、職能力者が持っている道具紋の道具だ」
「! 『モップ』に『摑』を加える能力!」
「植木君?」
 
伸びたモップは真っ直ぐにボスへと向かう。
(あの剣が道具を斬れないなら、俺のモップも斬れないはず! ならそのまま奴を捕まえる!)
モップが今まさにボスを摑もうとする同時に、森が剣を振り落とす。同時に伸びたモップがきれてしまった。
 
「な・・・道具はきれないんじゃ・・・」
「ああ、言い忘れたね。確かに道具紋の道具を一刀両断することは出来ない。
だが、『効果紋』によって『効果が追加』された道具は一刀両断することが出来るのさ」
 
再び困惑の色が浮かぶ植木たち一同。
 
「効果紋によって追加され、使用者の元から離される・伸びる・飛んで行ったりするものが一刀両断の対象になるわけだ。つまり君のモップも今「伸びた」わけだ」
 
植木のモップは伸びた部分が斬れても、また『摑め!』と叫べばいくらでも伸ばす事ができるが、あの剣の前ではもう意味をなさなくなってしまった。
ボスがつかつかとモニターの後ろに下がり、ボタンを押す。
同時に横にある、ドアが開く。そして大きな音――ヘリコプターのような音が聞こえてきた。
 
「逃げる気か!?」
「じゃあ、そうゆうことで後はたのんだよぉー」
 
ボスはそう森に伝えると、場違いな陽気な声を
あげ外のドアへ向かった。
 
「ハイジ・ナガラ・ソラ! あいつを追ってくれ! 俺はまだ森と――」
 
植木がそういい終わる前に斬りかかってきた。
すぐさまモップの棒部分で防ぐ。
とりあえず『摑』の能力さえ使わずに、
モップを使用させなければ、折れる事はないだろう。
だがこのままでは・・・
 
 
 
 
 
 
「てめー待ちやがれぇー!」
 
ハイジ達はボスを追い屋上へついた。
だがそこには、さきほど聞こえていたヘリコプター
らしき音は聞こえない。
 
「ふふふ・・・これでやっとまともに戦えるね。」
「何だって?」
「君たちをいっせいに相手にすると、さすがに勝てる気が怪しいからね・・・あ、ちなみにさっきの音はあの部屋の中で録音してたのを再生しただけだよ」
 
ボスは後ろに何個もある箱の中から拳銃らしきものをとりだす」
 
「うお!」
「大丈夫。あれは模型だよ」
「さすが長柄だ。見る目があるね。じゃあ、私の職能力を見せてあげようか」
「?」
「さっきから、随分親切だね」
「どうせ、教えても君たちは死んじゃうしね。『道具』に『効果』を加える能力!」
 
そういった瞬間、模型の銃が光った。
光った直後にそれをハイジたちのほうへと向ける。
 
「ハイジっち。すぐ洗濯機出して!」
「は?」
「早く!」
「ふ・・・『モデルガン』に『連』を加える能力!!」
 
ボスがトリガーを弾いた瞬間、とてもあのモデルガンから出るとは考えられないほどの
玉が一斉に発射された。
 
「うおおお!?」
 
ハイジは手の前にだし、すべてのプラスチック弾を防ぐ。
いくら連射されも所詮はプラスチック。
洗濯機の強度にはかなわない。
ボスはすぐさま、玉を入れ替え叫ぶ。
 
「『モデルガン』に『破』を加える能力!!」
 
再びトリガーを引くボス。
今回は1発しか発射されない。
発射されたプラスッチク弾が洗濯機に当たる。
だが、さっきのように弾かれる音がしない。
 
「な・・・何だ?」
 
恐る恐る洗濯機を見るハイジ。
するとプラスチック弾が洗濯機にめり込んでいた。
 
「なんなんだその能力は!?」
「効果が2つも・・・なんで?」
「これが私の職能力だ。効果を持たない・能力者が所持していない道具に『好きな効果紋の能力』を加える事ができる」
「なんだその能力は!?」
 
ハイジが叫ぶ。
ソラとナガラもなんだその能力は? と思わんばかりに唖然としている。
 
「さっきの『連』で超連射を追加し『破』の効果で強力な破壊力をプラスチック弾に追加した」
「そんな職能力があるなんて・・・」
「限定条件も教えてあげようか?」
「うん。教えて」
 
ソラがあっさりと答える。
ボスは苦笑しながら、問いに答える。
 
「その1。道具に好きな効果を加える事ができるが、加える事のできる
効果は一つの道具につき効果は一つまで。
その2。効果を加え、一度解除した道具に同じ効果を加える事はできない。
つまり、このモデルガンは『連』と『破』を加える事はできないってわけだ。
それ以外はまだ追加できるけどね。
それさえ守れば、どんな効果も加える事ができる。
効果発動中に別の道具に効果を発動できるしね。」
「まさか・・・さっきの森って子が持っていた剣もその能力で!?」
「ああその通りだよ」
「てめー! 騙してやがったな!」
「騙してなどいない。君たちが理解できなかっただけだ。
それに私は『剣の能力』と言っただけで『彼女の職能力』とは言っていないはずだけど?」
「あ・・・」
 
ボスの言葉に固まるハイジ。
固まっているハイジをよそに、ボスは再び大きな箱の中に手を伸ばし叫ぶ。
 
「喰らえ! 『ロープ』に『捕』を加える能力!」
「うわぁああ?」
 
放たれたロープはソラの元へ向かい、一気に結びついた。
これではもう身動きは取れない。
 
「うーー、外れないぃ」
「後、2人!」
 
ハイジとナガラはお互いに構えを取る。
そして、ボスへと突っ込んだ