大声で泣いていた森も少しづつ落ちつきを取り戻してきた。
植木が森に、話しかける。
 
 
「森、もう大丈夫か?」
「・・うっ・ひぐ・・うん。なんとか・・・うぐ・・・」
 
 
まだ、泣いてはいるがさっきほどではない。
植木は下に落としたモップを手に取り
立ち上がる。
 
 
「俺はこれから、あいつと戦ってくる。仲間と一緒に」
「ま・・・待って!」
「どうしたんだ?」
「わ・・・私も行くよ・・・」
「駄目だ」
「な・・・なんで? この剣強いよ? 私も頑張るから――」
「これ以上、森を危険な目に合わせたくない」
「で・・・でも! 私も戦いたいよ」
「何でだよ? お前は今までこんなに傷ついて危険な目にあってきたのに・・・
なんで、自分から危険目にあおうとするんだ?」
「危険目にあおうとしてんのは、あんたもじゃない!」
「は?」
「2年前も今の戦いも・・・自分から傷つこうとするじゃない!」
「俺の事だからいいんだよ」
「良くない! 植木は他人の事を大事にしてるけど・・・もっと自分を大事にしてよ。私にも助けさせてよ・・・」
 
 
森の青い瞳からゆっくりと涙が出てくる。
泣き止んできたの、また止まらない涙が出てくる。
 
 
「わかった・・・そのかわり自分からあいつにはつっこまないでくれ。
俺の仲間がもしもやられてたら、みんなを助けてすぐに逃げてくれ」
「うん・・・でもそれじゃ植木が・・・」
「俺は、絶対に大丈夫だ」
「本当に」
「本当だよ。俺が森に嘘ついたことあったか?」
 
 
まるで、映画やドラマのワンシーンで使われているきざな台詞を
口にする植木。
 
 
「うん。いっぱいあるよ」
「え・・・?」
「俺は、大丈夫だって言ってたのに・・・いつも自分から死ぬようなことに首を突っ込んでた」
「う・・・」
「自分からわざわざ消滅しようとした」
「う・・・と、ともかく信じてくれ!」
「わかった。信じてるよ?植木」
 
 
森も下に落とした剣を取り、植木と一緒に屋上へと向かおうとする。
急いで向かっている最中に森が植木に言う。
 
 
「植木はあいつに能力知ってる」
「・・・前に一度ペラペラ喋ってた奴がいたけどよく意味がわかんなくて・・・」
「どうゆうの?」
「道具に効果を加える能力だってさ。教えてもらった時はよくわかなくてさ。
道具紋から出てきた道具に、特殊な効果を加えるのが職能力だろ?
それなにに、職能力の事を職能力だって言われたようなもんだからさ・・・」
「あいつの能力はな、本当にそのままなの」
「森は失点のか?」
「うん。この剣を渡されたときにいろいろ話しえてくれたから」
「おお! でどうゆう能力なんだ?」
 
 
森は植木にボスの職能力の全てを話す。
好きな道具に好きな効果を加えることができるという事。
一度適応した道具に、もう一度同じ職能力を加えることができない。
一つの道具に違う能力を加えることが出ないなど。
その能力の全てを。
 
 
「まるで、ロベルトの理想を現実に変える能力だな」
「うん。でもそれよりもやっかいだよ」
 
 
話し終わったとき、二人は屋上についた。
そこで二人が目にしたものは――
 
 
「ハイジ! ナガラ! ソラ!」
 
 
ロープで何重にも巻かれて身動きができないソラ。
ボスの強力な職能力の前に、方膝をつき耐えているハイジとナガラ。
そして、かなり苦戦し、つかれきった顔をしたボス。
 
 
「おや・・・やっと到着かな・・・? 何をしている! そいつは悪党だといったろう! 早く攻撃するんだ!」
「もう、記憶を取り戻したわよ! あんたの方が大悪党だって事もね!」
「!?」
 
 
どうやら、森の記憶が戻るという事はボスにとって完全に想定外だったらしい。
植木のモップが光りだす。
 
 
「モップに掴を加える能力!」
 
 
一直線にボスへと向かうモップ。
同時にボスの持っている道具も光りだす。
 
 
「ナイフに斬を加える能力!」
「あれは・・・」 
 
 
ナイフでバッサリと切られるモップ。
ナイフは小型だが、斬の効果が加わったので
モップを斬る事には、たいした支障はない。
 
 
「それは、森が持ってた剣の能力」
「裏切りもにはもうこんな強力な能力は要らないね」
「何ですって!?」
 
 
森の怒りの言葉と同時に、
森が持っていた剣が光りだす。
 
 
「それで、その剣はなんの能力も持たないただの剣だ」
「森・・・みんなを頼む」
「うん」
 
 
ボスの言葉を聞き流し、森は一直線でハイジたちの元へ向かう。
植木に言われたとおりに、ハイジたちを助けようとした。
だが――
 
 
「手袋に伸を加える能力」
 
 
「な・・何!?」
 
 
植木が反応したときにはもう遅かった。
伸びた手袋は森の首を掴み、自らの元へと引っ張っていく。
そしてゆっくりと森の首を掴んだまま、ビルの橋へと歩いていく
 
「うっ・・・っく・・・は・・・離してよ!」
 
 

森の脳裏に2年前に崖ふちから落とされたことのある
過去が甦ってきた。
今では小さなトラウマになっている。
森の顔に恐怖心が出てきた。
森は手を固め、ボスの顔面めがけ殴ろうとするが
あっさりと止められてしまった 
 
 
「思ったよりも反抗的な子だ」
「ふ・・・ふざけないでよ!」
「や・・・やめろ! 森を離せ」
「しょがないな・・・」
 
 
次の瞬間森の首を離したボス。
しかし「ビルの真下」へ。
 
 
「ちゃんと離してあげたろ?」
「森ーー!」
「植木―!」
「植木くん!?」
「植木っち?」
 
 
なんと植木は下に落ちって行った森を追うように自らも
ビルのしたへジャンプした。
空中で必死に動き、なんとか森を掴み抱きしめる。
 
 
「う・・・植木ぃ・・・」
「大丈夫だって言ったろ!」
 
 
だが、そんな言葉とは裏腹にどんどん地面が迫ってくる。
もう目と鼻の先までせまってきた
そして、大きな音がした・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「植木――!!」
 
 
ハイジたちは必死に植木の名前を叫ぶ。
そしてその怒りの矛先をボスへと向ける。 
 
 
「てめー何しやがる!」
「何って・・・離せ! って言われたから話しただけだよ。」
「意味が違げーだろうが!」
「ハイジくん。動けるかい?」
「あたりめーだ。こいつだけは倒す!」
「おやおや、お友達の敵討ちかい?」
「誰の敵討ちだって?」
「!?」 
 
 
その声に方へ顔を追う一同。
そこには・・・
 
 
「植木!」
「植木くん!」
「植木っちー!!」
「ば・・・ばかな・・・なんなんだその翼は!?」
 
 
森を抱えた植木の背中には大きな青色の翼が生えていた。
 
 
「飛行神器・・・花鳥風月!」
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
A BOY FLIES IN SKY
―少年は大空を飛翔する―