「植木ぃ・・・。お願い。早く来て・・・!私たちを、私達を・・・。」
その言葉で気がついた。
私は、植木を『戦力』にしていたんだって。
〜いつも〜
今は、三次選考のマリリン戦。
さっき受けた攻撃の傷が、痛む。けど、ほとんど感じない。
佐野が目の前でやられてる。
植木!早く来てよ!私たちだけじゃどうにもならないの!ホラ、佐野がやられてる。早く。はや・・・
気がついた。
「今・・・私・・・なんて・・・?」
声が震えている。
「どうした?森?」
ヒデヨシがこっちを見る。それに、私は気づかない。
顔を覆う。手が微妙に震えているのが分かる。
「……わかりませんわね…。」
マリリンの声がかすかに聞こえる。
「……なぜ、そうまでして………?」
「んなもん…”仲間”だからや!」
ズキン。心に佐野の言葉が響く。
やめて。やめて。こんな私を…助けないで!
植木ぃ・・・。
植木の楽しそうな顔が浮かび上がる。
一番よく思い出せるのは、植木の背中。
いつも、守ってくれていた背中。
みんなの背中。
私って…。それ、当たり前だと思っていたんだ…。
私は能力をさずけられたけど使えない。分からない。
(だから、きっと皆が守ってくれるわよ。植木、佐野、鈴子ちゃんがー…)
甘い。甘い。甘すぎる。いつも…。
「うえき。」
つぶやく。幸い、皆に聞こえなかったみたいだ。
時間。私の周りだけ、時間が止まっている感じがする。いや、止まっている。
…なんで、植木に守られていると安心するんだろう?
鈴子ちゃんや、佐野の背中じゃだめなのに…。
強いから?同じクラスだから?なじみだから?最初っから、味方だったから?
?でいっぱいになる頭。
そのとき、ひとつの言葉が浮かび上がった。
『私は、植木が好き』
『いつも、いつも。植木が大好き』
…戦力になるから?今まで、『戦力になる』としか、考えていなかった。
『ちがう。植木が、”好き”だから』
気づいた。
私は、植木を戦力にしていたってこと。
そして…。
いつも、植木が”好き”だってこと。
いつも。