時々、自分が死神じゃなかったら…と思うことがある。
「円花、好きだ」
 そう言ってくれた彼。
「…私もですよ。彗さん」
 そして、それを受け入れた私。
 でも…時の流れは私たちという関係を許してはくれない。
 彼は人間。
 そして、私は死神。
 それが一体何を意味するのかは考えなくても分かる。
 彼が大人になっても、お爺さんになっても…私はほとんど、この姿のまま彼と一生を過ごすことになる。
 彼と出会う前は、そんなことまったく気にならなかった。
 それなのに、それなのに…。
 彼に出会ってからは、どうしてこんなに時間の流れの違いが気になるんだろう。
 私をいつまでも愛してくれますか? と、彼に聞いたことがある。
 そんな私の質問に彼は当然のごとく
「普通、そうだろ?」
 と、答えてくれた。
 きっと、彼は死ぬまで私を愛してくれる。
 過信じゃない、これは私の確信。
 嬉しい、彼のそんな思いがとても嬉しい。
 だからこそ、怖い…。
 彼という存在がやがて失われてしまうのが。
 …もし、彼の寿命が近づいて、魂が肉体から離れようとしているとき…。
 本当に、私は彼の魂を切り離すことが出来るのだろうか。
 彼に直接私自身が手を下すことなんて出来るのだろうか。
 …分からない。
 だけど、それは、ずっと未来の話。
 …今は考えるのはよそう。
「円花、どうした?」
 今は…
「何でもありませんよ。彗さん」
 この時間を当たり前のように過ごしていくだけで、十分なんだから。

終了