…遂に森の家の前まで来てしまった……と、玄関前で立ち止まっている植木
少し戸惑ったが………ピンポーン、と玄関のチャイムを鳴らす
「……はーい?どちらさ……おや植木くん!久しぶりだね。あいに用かい?」
出てきたのは森の父親で前に遊びに来てたころよくお世話になっていた
「こんちは……まぁ…そうです」
「来てくれたのは…嬉しいんだけど………あいはちょっと…ね…」
「…まだ体調が悪いんですか?」
「いや…実はね……どこも悪くなんてないんだ………ただこの前の土曜、家に帰ってきてから自分の部屋にこもりっきりで、何があったのか聞いたんだけど何も言わなくて困ってるんだ…」
「……!」
もちろん植木は直感した、その日に俺は言ったんだ…近づくなって…
まさかそこまで森を傷ついていたとは知らず、自分の言った言葉がどれほど酷かったのかをあらためて理解した。
「あの…森と話をしてもいいっすか?」
「…あぁ、確かに君なら説得できるかもしれないな……それにこれから私は仕事に行かなくてはならないし…お願いできるかな?」
「……はい」
「じゃあ私は行くから、あいの部屋は二階にあるからね。もしかしたら今日は帰ってこれないかもしれないと、あいに言っといてくれるかな?」
「…わかりました」
と植木に頼み森の父はしばらくして出て行った
「…さて、と」
そう言って植木は階段をあがっていった
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なんて言ったらいいかな…、と考えながら『あい』と書いてあった札がかかってあるドアの前に立ち……コンコンとノックする
「……だからほっといてって言ってるでしょ!」
「…………!」
父親だと思ったのか森は植木が言葉を言う前に怒鳴ってきた
少し戸惑ったが…
「……森…………俺だけど…」
「………え?………その声……植木!?」
「…ああ」
相手が植木だとわかって相当驚いた様子
「……なんで…そこに………父さんは?」
「俺に任せるって言って、仕事に行ったみたいだぞ」
…あのばか親父、と心の中で文句を言う。
「なんで、学校に来ないんだ?べつにどこも悪くないんだろ」
「…………」
「…やっぱり……あの時、俺がああ言ったからか?」
「…………ッ」
森は何も言わない
「…………何も言いたくないのなら、そのまま聞いてくれ」
「………?」
なんだろう、と少しドアに近づく。
「…………俺……俺おまえにあんなこと言って……ホントに悪かったって思ってるんだ……あの時おまえと佐野を見て、なんかメチャクチャ腹が立っちまって………その前のあの昼休みの時だって、イライラしてて…」
「ほんとはあんなこと言うつもりなんてなかったんだ…」
「………!」
その植木の言葉に大きく目を見開く
そして植木は大きく息を吸い込んではっきりと言う
「だから……ほんと……ごめんっ!」
「…………植木」
「いまさら、あんなこと言って許してくれなんて言わない…ただ
…謝りたかったんだお前に……」
「…………」
「……俺、この頃さ……おまえを見てるときの体の調子がおかしくってさ……心臓の鼓動がいきなり速くなったり…冬だってのに体が熱くなったり…で…………やっと気づいたんだ」
「…?」
「……俺…森のことが…………好きなんだって…」