もう桜も散り終わり、もうすぐ梅雨になろうとしている
森と植木が通っているこの高校ではもう新しいクラスに皆、慣れ始めていた
高校二年生になって二人は同じクラスになって毎日変わらない生活を送っていた…

変わったことと言えば、佐野と鈴子が付き合い始めた事ぐらい
なんでも佐野が森に振られてからというもの鈴子が佐野を慰めるってな感じでいろいろ話をし続けているうちに、佐野が鈴子に告白をしてOKをもらい、めでたくカップルになった、らしい
ちなみに鈴子はあの後いったん外国に戻ったのだが、今では大阪のとある大学に入っている
この二人がカップルになったと森が知ったのは鈴子と電話をしている時だった
二人はよくあのバトルが終わってからも電話をしていて、今も最近の二人のまわりで起きた出来事について話していた

「へぇ〜、二人で野球の試合見に行ったんだ」
「えぇ、佐野君がペアのチケットを貰ったらしくて見に行ったんです。
わたしは野球を見るのは初めてだったんですが、とても面白かったですよ、
特にあのマスコットのトラがもうかわいくて、かわいくて///」

「いいなぁ〜…私なんてほとんど公園の掃除とか、街の中を散歩したりとか、そんなのばっかだもん……ちょっと羨ましい…」
「だったら、あいちゃんの方から誘ったりとかしないんですか?」
と提案するが

「……無理無理、あたしってば肝心なとこで上がっちゃうから」
はぁ〜、と自分の情けなさを、あらためて自覚して落ち込む森

「……うえきぃ…」
と目の前にある写真に写っている自分の彼氏の名前を見ながら呟いた


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「へぇ〜、ぬいぐるみ…」
「そうや…鈴子の奴、人が熱心に応援しとるって言うのにマスコットばっか見とってキャアキャアばっかり言うとるんやで……あと、打者がデットボールになったことでそれにキレて、選手達が殴りあいになって大乱闘になったときも、めちゃくちゃ、はしゃいどったし……」

こちらは植木宅、こちらも携帯で佐野と喋っていた

「で、そっちはどうなんや植木?」
「ん?なにがだ?」
いきなり話題を変える

「だから森とはどうなっとるんやってことや!」
「どうなってるって?」
「………どこまでいったか、ってことや…」
「どこまでって?」
意味がわからずにいる植木の様子に呆れる佐野

「簡単に言うと……キスぐらいまではいったかって話や……」
「…キスってなんだ?」
「……植木!お前な!!」
「冗談だって…まだそこまでは…いってないけど?」

おでこにぐらいは一回したけど…と心の中で呟き、笑いながら答える植木

「まだって……おまえらもう付き合い始めて結構経っとるやろ?」
「してないもんはしてないんだよ、そういう佐野の方はどうなんだよ?」

付き合ってからまだ日が浅いからさすがにまだそこまではいってないだろと思いながらも聞く植木

「…………」
「ん?………佐野?」
いきなり黙り込む佐野だったがしばらくして…

「した…で………キス…///」
「へぇ……………なにぃ!!?」


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「それほんと!?」
「えぇ…まぁ…/////」
森は奥手だと思われていた佐野と鈴子が、すでにそこまでの関係にまでなっていたことにかなり驚く森

「い、いつ?」
「え////…や、やきゅうを見に行った後、雨が降ってきたので……ち、近くのホテルにその日は泊まろうって事になったんです////……あ、べ、べつにやらしいことなんて、し、してませんよ!//////」

と必死に弁解しようとしている鈴子だが森は、ホテルに泊まったことはまったく気にしておらず、ただもうすでに二人がキスまでいっていると言う事の方に驚いている
なにせ鈴子達よりも前から付き合っていたので、先を越されたと思っている森

「あいちゃん達の方はどうなんですか?」
「え?……それが…ま、まだ…/////」
…告白されたあの日に確かにされたって言えばされたんだけど…ホントの方じゃないし…
それに植木のことだ…

「植木の方からしてくるなんてこの先、絶対ないかも…」
「………でしたらそういう雰囲気にすればいいんですわ!」
「………え?」

どうやって?と、聞く森

「明日から連休ですよね?だからあいちゃんからデートにでも誘ったら
どうでしょうか?」
「……なるほど…」
としばらく考え込む…

「……よし!そうしよう!!ありがと鈴子ちゃん!」
「どういたしまして……がんばってくださいね」
といって二人は電話を切った

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「………ん?また電話か…」
佐野達の進展を聞かされて驚いた植木であの後いろいろと佐野からへんなアドバイスをもらって、ついさっき電話を終えて本を読んでいた植木だったのだが、また携帯の着信音がなって携帯の方に目をやる

「……もしもし?」
「あ、うえき?あたしだけど」
「ああ、森か……どうしたこんな夜中に?」

時計に目をやると、すでに11時を過ぎている

「え、えっとね………明日って暇、かな…?」
「ん?明日?」
近くに貼ってあるカレンダーを見る

「べつに連休だから部活も休みだし…暇って言えば暇だけど…?」
「……あ、あのさ……久しぶりに二人でどっか行かない…?」
「え……べつにいいけど…どこにだ?」
「え、えっと……いろんなとこ……」
誘おうとしか考えておらず、まだどこに行こうなどとは考えてなかったのであった

「わかった……俺もどっか行こうと森、誘おうと思ってたし…」
「え?……そ、そうなんだ」
断わられなかったことに安堵する森

「じゃ、じゃあ公園に10時にね…………遅れないでよ?」
「わかってるって…(汗)」
この前遅れてぶん殴られたのを思い出す

「じゃあ、まってるから////」
「…あぁ」
硬く約束を交わして電話を切った