「ただいま…」「おじゃましま〜す」
ここは植木宅なのだが……返事がない

「………?ねぇ植木、もしかして誰もいないの?」
「ん?ああ、言ってなかったっけ?…父ちゃんはなんか外国に行ってて当分帰ってこないし、姉ちゃんは看護婦になるために今、国家試験があるから、猛勉強を友達の家に泊まりながらしていて、こっちにはしばらく帰って来れないって言ってた」

「じゃあ、今植木って一人で暮らしてるの?」
「……ま、そういうことだ」

そう言って台所に行き、冷蔵庫を開けながら

「森、オレンジとグレープ、どっちがいい?」
「え、じゃあ、オレンジで」
「わかった」
そう言ってコップを取り出して注ぐ

その間、森は部屋をグルッと見回す
前に一度だけ着たことがあったがその時とそれほど変わった様子はなかった

だがまだ見たことない部屋がある……それは…

「ねぇ……植木の部屋ってどこ?」
「ん?…俺の部屋?」
注ぐのをピタッと止めて森の方に顔を向けながら聞く

「なんでだ?」
「いや、ちょっと気になったから…」

嘘…、ほんとはそれを見るために来たのだと言うことは黙っている森

「あ、見せたくないって言うなら無理しなくてもいいから!」
「………別にいいぞ?…こっちだ」
そう言って森を自分の部屋に案内した

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「ほら、ここだ」
「…………へぇ〜……やっぱ結構綺麗にしてるんだ」

植木の部屋は、本棚の本も綺麗に整頓されており、ベッドのシーツも皺一つないくらい綺麗にされている
まぁ、公園などを自主的に掃除をしているくらいなので本人からすれば当たり前なのだろう

「じゃあ、なんか持ってくるから、本とか読みたいなら勝手に読んでていいからな」
「あ、うん、ありがと」
そう言って植木は一旦部屋を出ていった

「さて、と…なにしようかな…」

初めての男子の部屋…やはり自分の部屋とは全然印象が違った

植木の机…やはりきちんと整理されてあったし、自分と同じ、あのバトルの後に撮った写真も飾ってある

植木の本棚…自然についての本など植木らしい本もあったし、こんなの読むのと思うほど意外な本もあった

そして植木のベッド…そこに腰掛け、しばらくボーっとしていたが……自然に寝転ぶ森
そこからは植木の匂いがして、なんだか植木が身近に感じるような気がした
しばらくそのままでいたが、突然眠気が襲ってきて、ついそのまま眠ってしまった




「悪い、待たせたな、たしかオレンジでよかったよな……って森?」
返事が返ってこないので見てみると自分のベッドに森が寝ている

「歩きつかれたのか……」

近づいて見てみるとスヤスヤと気持ちよさそうに寝ている

「……ったく…そんな無防備で男の家で寝るか…ふつう……?」

森の髪を撫でながら言う植木

「まっ、それだけ信用されてるってことかな……」

「………ん……えき…」
「ん?」
「…………うえき…」
「…………寝言…か?」

自分が夢に出てるんだろうと察して少し嬉しく思う植木
そして、森の寝息が顔に感じるくらいまで自分の顔を近づける

「今回は…これだけにしとくかな………おやすみ…」

そう一言呟いて植木は寝ている森の頬にキスを一つ落とした