「…………ごめん…あたしには…わからない……」





「………そっか…」






ある男女がある教室で

一人は俯いていて

一人は少し悲しそうな顔をしていて

二人は黙っていて…ただ時間が刻々と刻んでいた…







第一話 『失恋』








この話は数時間前にさかのぼる


この火野国中学一おせっかいな女子、森 あいと
普段なにをかんがえているのかまったくわからない男子、植木 耕助

この二人がいつものように朝、一緒に登校していた

「…………眠ぃ…」
「………あんた大丈夫?今日の植木なんだかいつも以上に眠そうだけど…」
「ん〜〜………そうか…?」

こんないつものやりとりをしていた二人
こんな風景、周りから見たら、仲の良いカップルに見える

だが実際の関係はただの友達……いや…親友、仲間という関係
二人ともお互いのことを意識したことが無い…って言ったら嘘になる

この眠そうにしている方の植木
ホントは隣にいる森のことを意識しながら、毎日を過ごしているのだが
……なかなか告白する勇気がでない


植木は学校では結構モテている、ずっと前は女子から敬遠されていたのだが、
植木のがんばり、努力が周りの人に感心されるようになって、
最近はしょっちゅう告白されている…すべて断っているのだが

「ねぇ植木、あんた……また告白されたって聞いたけど…?」
「ん…?あぁ……まぁな…」

「ふ〜ん…確か好きな人がいるんでしょ?友達から聞いたんだけど…」
「……ん…」

お前なんだけどな…と心の底で呟くのだが実際は言えない

曖昧な返事の植木を見て更に森は問いかける

「ねぇ……その人ってあたしが知っている人?」
「………なんで?」

「え?ただ気になっただけよ。友達の好きな人って普通気になるもんじゃない?」
「…………」

まったく期待外れの答えに深い溜息を吐く
このままじゃいけないな…、そう思ってなにかを決心したように気合いをいれる

「よしっ!」
「………?どうしたの植木?急に真剣な顔し「森!!」
遮って植木は森と向き合う

「な、なによ///?」
「………このままだと遅刻すっから走るぞ!」

「……は?」

植木はそう言って呆然としている森を置いて走って行く

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!?」


…やっぱそんな急には言えないよな…と呟きながら植木は学校へと急いだ


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「森、HRが終わったあとちょっと残ってくれないか?」
「え……なんで?」

昼休み屋上で二人が弁当を食べていた時、植木が突然頼んできた

「ちょっと話があるんだ…」
「………?話ならここで言えばいいじゃない」
「ここじゃ……言えない…」


「なんでよ?」
「とにかく放課後待ってるからな」

そう言って植木は食べ終えた弁当を持って一人教室に戻って行った

「ちょ、うえ………ったくなんなのよ一体…!」

と一人ポツンと残されたことで植木に悪態をつけながら
森は、昼休み終了のチャイムが鳴ったのを確認してすぐ後を追った





――放課後


放課後の教室
中三なので、ほとんどの生徒は部活動を終えてしまっているので、
今現在この教室にいるのは植木と森の二人しかいない

「……っで、話ってなに?」
「……………」

先ほどから呼び出した本人は黙ったままなので少しイライラしている森

「話があるんじゃなかったの?無いなら早く帰るわよ!」

そう言って鞄を持ってさっさと帰ろうとする森…だが

「…待て……森…」

ここでやっと口を開く
それ森は足を止め、植木のほうに体を向ける

「朝、聞いたよな…俺が好きなやつ…誰だって…」
「……え?…う、うん」

それがどうしたの、と言おうとしたのだが、その前に植木から……



「あれ……おまえのことなんだ…」

「…………え?」


「だから俺は………ずっと森のことが…好きだった…」
「う、うえき……」

当然森は突然の告白に戸惑い、呆然とする

「…森は………?」
「……え?」

「森は俺のこと……どう思ってるんだ……?」
「……………」



………長い沈黙



そして……


「私は確かに植木のことは好きだよ?……だけど……それは友達として…仲間として…
……だから…恋愛として好きかどうかなんて………」







「…………ごめん…あたしには…わからない……」





そう俯きながら……答えた…



「………そっか…」



そのまま二人は黙っていて…ただ時間が刻々を経っていった…