「…………はぁ…」

…まだ朝だっていうのに、あたしってば溜息ばかり吐いてる
…それと……なんだか胸が………痛い

「あ〜いちん!おはよう!!」
「あ、みっちゃん…おはよう……」

友達のみっちゃんが声をかけてきてくれた。
だからしゃきっとしようと気合を入れるが……力が入らない…

「どうしたの?なんだか元気ないみたいだけど?」
「え?……ううん、べつに…」
「………?そう?」

自分でもこの痛みがわからないのに、友達に言えるわけないし、心配させたくもない
そう思って普段の自分を意識しながら、なにか面白い話題がないか考えていた時…



「…………あれ?」
「………?どうしたの?」

「ねぇあいちん……あれって植木君じゃない?」
「………え…?」

みっちゃんの指差す方を見たら…確かに植木だった


……でも…


一人じゃない…


「…あの人は……」


昨日、父が言ってたのはあの子のことだろうか……髪は短く茶色で、
顔立ちは…素直に言えば、女の私から見ても……綺麗な人…

その人と植木が、楽しそうに…笑いながら一緒に歩いていた


「うそ〜…なんで植木君と…?」
「……ねぇみっちゃん…あの人…知ってる?」

「え?……あ、そっか、あいちん別のクラスだから知らないの無理ないかもね」
「………綺麗な人だね…」

「うん。あの人は佐藤さんって言ってね、成績はいつも学年トップで女の子なのに、
スポーツの運動神経も男子に負けないくらい良くて、もう男子からの告白の数もすごいらしいの。
…まさに、スポーツ万能、頭脳明晰の女子…」

私、女で同じ歳だけど結構憧れてたりするんだ、と付け加えて言う

…確かに私から見ても綺麗な人だと思った…

…だけど…なんで植木と……


「………あいちん!ボーっとしないで急がないと遅刻するよ?」
「……あ、うん…」



…その時、植木もこっちに気づいて……つい目が合ってしまった


でも植木はすぐ彼女の方に戻してまた楽しそうに話し続けた

それを見たとき、また……胸の奥がズキンッと……痛んだ…


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++






「お〜い植木!今朝一緒に登校してたのって佐藤だよな?」

休み時間になったとたん、植木の友達らしき男子が植木の下に駆け寄りながら聞いた

「え!?マジかよ!佐藤ってB組の佐藤か!?」

その言葉で周りの男子が植木のもとに集まる

「結構いい雰囲気だったけど、一体どうゆう関係なんだ。ん?ん?」
「まさか付き合ってたりすんのか?」

なぜかクラス全員が注目していて、みな植木の答えを待つ




「………ん〜…まぁ、そんなもん…かな…」




「………ええぇ〜〜!!!?」

クラスのほとんどが同じリアクション

「マ、ママジかよ!?」
「羨ましいぞ、お前!!」
「うそでしょ〜!」
「ショック〜〜!」
「いいなぁ佐藤さん」

みんなザワザワと騒ぎ立てる

「なぁどこまでいったんだ?」
「さぁ」
「お前から告白したのか?」
「違う」

「じゃあ…「俺、寝る」

植木はそう言って周りの質問を無視して勝手に寝てしまった

当の本人が寝ても、周りの人達はまだ植木のことを話している


「ねぇあいちゃんはどう思う?」
「…………え…なんで?」

「だってあいちゃんだって植木君とは結構いい仲だったじゃない?
だからどうなのかなぁって思って…」

「…………べつに…私と植木はただの…友達だから…」

そう…植木とはただの友達……

あの時だってそう植木に言ったじゃん

…なのに……なんでこんなに

…胸が……痛いんだろう

「………ッ…なんで……」


この時、森は自分の気持ちにまったく気づいてなかった

本当の気持ちに…