「よ〜し今日はここまで!お前ら帰ってちゃんと受験勉強しろよ!!」

じゃあね、バイバイ、と挨拶が飛び交う中森は少し躊躇しながら植木の席に向かう

「……うえ、き…」
「……ん?…………森、か…なんだ?」

「あのさ……今日、一緒に帰れる、かな?」
「………ちょっとまっててくれ」

そう言って一旦教室を出た

窓から廊下を見ると、植木が隣のクラスのドアの前で、彼女…
…佐藤さんと何かを話している

「…じゃあ、そういうことだから…悪いな」
「ううん、いいの……そういう約束だし…」

そう言ってまた森の方に走ってきて

「いいぞ……じゃあ帰るか…」
「………う、うん」



「ねぇ植木…よかったの?佐藤さんと一緒に帰らなくて…?」


「……ん?…ああ、いいんだよ……それに森とちょっと話したかったし…」
「え……?」
「………ちょっと公園に寄っていいか?」
「……う、うん…いいよ…」


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「……で、どうなの?佐藤さん…とは……?」
「………どうなのって聞かれてもな…」

普通だぞ、と言いながらベンチに座って、お前も座れよと促す
森も隣に座ってしばらく二人で公園の風景を眺める


「ねぇ……植木…」
「…………ん?」

「この前のことなんだけどさ…」
「……おれが告白…したことか?」

「…………うん」

「なんだよ……まだ気にしてんのか?」
「………だって…」
「言ったろ……謝られると逆にツライって…」
「……ん…」

俯いたままこっちを見ようとしない森
植木はいつもの笑顔で森に言う

「なぁ森、おまえ言ったよな…友達のままでいたいって」
「…え……う、うん」

「俺もよく考えたんだけど……やっぱそれが一番いいんだな…って思った」
「…植木……」

「だから……これからも俺達…ずっと友達でいような?」
「………うん…」



ズキンッ


植木が私のために言ってくれてるんだ、そう思ったらとても嬉しくなったのだが…

なのに………なぜだろう……また……


「どうした森?」
「………う、ううん!なんでもない!」

「じゃあ帰るか?…なんかおごってやるよ」
「……じゃ、思いっきり高いのおごってもらおうかな」
「おいおい……(汗)」


そう久しぶりに二人で笑いながら、その場を後にした

だが二人は気づいてなかった
ベンチの後ろにある木に女子が一人いたこと…

「……………ッ」

佐藤は無言で二人とは反対方向に走っていった


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そして森宅前

「じゃあ植木……また明日、学校でね」
「ん…じゃあな…」




「なぁ、森…」
「………?なによ?」

「あー……えっと…だな…」
「……?はっきりしなさいよ」

「…やっぱなんでもない」
「……あんた…私をおちょくってない?」

「悪い悪い、んじゃな!!」

そう言って植木はその場から逃げるように走って行った

「………なんなのよ、まったく…」

離れていく植木の背中えを寂しそうな目で見ながら、森は家の中に入っていった








「いまさら……なに言おうとしてんだ…俺……」

その姿をチラッと振り返りながら一人呟く



「もう諦めたはずなのに、な…」

フッと小さく笑いながら植木は家路を走っていった