「……どういう意味?」


まったく意味がわからない森


「付き合ってもらってる……その言い方…なんだか…」
「…はい、実は無理やり付き合ってもらってるんです…私…」

「ど、どうして?」


「実は私…明後日にはもう転校するんです……家の事情で海外に…」



「…………ッ!!」


その衝撃的な言葉を聞いて森は呆然とする

「じゃ、じゃあ植木はそれを分かってて告白を受けたの?」
「…はい……正直私も驚きました、絶対断られると思ってたので…」

まだ信じられないと言う顔でいる森

「……でも返事をもらった時、植木君と一つ約束したんです」
「………約束?」

そういえばなんかそんなこと言ってたような…

「あの…どんな…?」
「それは……」





「…約束…ですか?」
「…ああ、一つだけ聞いてくれないか」

真剣な顔で…だけど目はどこか悲しそうな目で言う

「多分まだ俺は森のこと諦めきれてないと思う…だからあいつと友達として
接することができるまでは、…恋人未満って言う関係じゃダメか?」

その悲しそうな目で佐藤を見つめながら植木は言う

「…そんなことなら別に………私だってもうすぐ転校するんだし、それでも
付き合ってくれるって言うなら私は…構いません…」

少し俯きぎみになりながらも笑顔で答える佐藤

「……悪い……じゃあ、暗くなってきたから帰るか…?」」
「……あ、はい!」



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「…それから後に植木君は森さんとはもう友達に戻ったと言われたんですが…
それでもどこか寂しそうで…」

「…………」

黙って聞いていた森だが、心の中ではあの日、自分が言ったことを思い出していた

植木は真剣に自分のことを好きだって言ってくれた…だけど私は自分の気持ちにも
気づけずに植木を傷つけてしまって…

二人が一緒にいるのを最初見てからというもの、締め付けられるような痛みが続いたり、
植木といる時間がほとんどなくなってしまったり

結果自分の首を絞めるような形になってしまった…


……だけど一つだけ良いことがあった


それは……自分の本当の気持ちにちゃんと気づいたということ


「さっき聞いたよね?…あたしにとって植木ってなんなのかって…」

「え?…あ、はい」


「植木は、いっつもボーっとしてて、一人にするとなにしでかすか分かんないし、
危なっかしいし、他人優先で自分のことはどうでもいいって感じだし、…」

指を折りながら数える森

「だけどね…そこがあいつの良い所でもあるし、他人から見たらただの正義馬鹿
にしか見えないけど……あたしから見たらほっとけない存在でもあって……」

そう言って佐藤と目を合わせる



「たぶん……ずっと前から、植木のこと…好きだったのかもしれない、な……」



今更気づいたって遅いんだけどね、と苦笑しながら言う森を見て佐藤はゆっくり微笑んだ

「やっぱり勝てないなぁ…」

「え?なにか言った?」

佐藤がそっと呟いた言葉
それは森には聞き取れなかった

「あ、いえ、なんでも……でも、もう私は転校するから諦めるにはまだ…」

「無理、だよ…あんな曖昧な答え方して今更好きだったなんて…言えない…」

そう言って悲しそうに俯く森

「それに今のあたしは植木のそばにいられるなら…それだけで…」

そう言う森も見て佐藤が…


「後悔…したくないんでしょ?」


「…………ッ!」


そうだ…みっちゃんにも言われたんじゃん…後悔はするなって

やっと自分の気持ちに気づいた…遅いかもしれない……だけど



「後悔は…したくない…」

そう森は自分の中で決心した

そう森が言った一言に佐藤はまたにこっと微笑んで

「…じゃあ私はこれで失礼しますね」

そう言ってベンチから立ち上がって帰り支度をする

「佐藤さん、今日はホントに…ありがとう…」
「いえ、私はやっぱり植木君とは合わないんだなぁって自分でも分かってましたから」

植木君とピッタリ合うのは森さんだけですよ、と付け加えられた言葉に顔を赤くする森

「……がんばってくださいね!」
「……うん!」

そう最後に一言言って佐藤は走ってその場を後にした








「たった一ヶ月だったけど…楽しかったなぁ…」

立ち止まって振り返りその公園を見ながら、まだベンチに座っている
森の姿を確認して…

「そばいられるなら、か……」

…私ももうちょっと一緒に居たかったな

そう呟いてまた走り出した

その目元に少し涙を浮かべて…










「さてと…あたしもそろそろ帰りますか!」

勢いよく立ち上がって公園を後にしようとした時


「…………ッ!!」



「…よっ」



「うえ、き…?」

植木が公園の入り口の前で凭れ掛かりながら立っていた