「なんでここに…?」

「いや、掃除しようと思って来たんだけど、お前らが先にいて邪魔しちゃ悪い
と思ってそこら辺で時間つぶしてたんだけどな…」

先ほどまでに佐藤と森が座っていたベンチに座って二人は久し振りに話していた

「そしたら佐藤と逢って森が呼んでるって言ってたから来たんだけど…」
「………!?////」

佐藤は自分の為に言ってくれたのだろうが森にだって心の準備がいる
今言うべきか悩んでいる時に植木が真剣な顔になって森を見つめていた

「……なに?」
「…あいつと…なに話してたんだ…?」

「………植木のこと…」

「……聞いたのか、全部?」
「……うん」

そっか、と植木は空を見つめながら言う

「植木は…なんで佐藤さんが転校するって分かってて付き合ってたの?」

森はずっと疑問に思ってたことを聞いた

「…森とまたいつもの関係に戻りたかった、からかな……」
「……え?」


暗くなり始めている夕焼けを見上げながらで答える植木

「あの日、森から断られた時、正直……辛かった…」
「…………ッ」

森もその日のことを思い出す

忘れられるはずがない

「そんな時、佐藤がちょうどここに来てさ…告白されたんだ…」


「最初は断ろうと思った…正直、失恋したばっかなのにすぐに気持ちを切り替えることなんてできないと思ったから…」


森は胸がはちきれそうなくらいに痛むのを堪えながら黙って聞いていた


「だけどあいつはもうすぐ転校するって言って少しの間だけでいいからと言った…
 俺はそれを聞いて…少しの間だけなら…その間に森とも友達として接すること
ができるかもしれないと思ってそれを…受けたんだ…」

「…そう、だったんだ」


「まぁ、結果こうしてまた森とこうやって普通に話すことができるようになったん
だけどな」

二カッと笑いながら言う植木だがもう森は我慢の限界、だった…

「だから森、これからも……って、おわぁっ!」

森がいきなり抱きついてきたため体勢が崩れかけたがなんとか立て直す

「ど、どうしたんだ森?」

「…………」

抱きついたまま黙りこくっている

植木はまったく状況がつかめていない

だがよく見ると森は震えながら、しかも少し泣いているような
啜り泣く声が聞こえてきた


「なにかあったのか?俺なんか森に変なこと言ったか?」

かなり戸惑いながらも植木は優しく声をかける

「……あたし、ずっと後悔してた…」

「…………え?」

「植木と佐藤さんが付き合ってると知って、佐藤さんと一緒に帰っているのを見て、
植木があたしのそばから消えちゃったような感じがして、胸が痛くなったりもして、
それまであたしは自分の気持ちに気づいてなかった」

「…………」

「でもみっちゃんや佐藤さんのおかげもあって、やっと……やっと、自分の気持ちに気づいたの」

目元に涙を浮かべながら植木をじっと見つめる


「本当はあたし、ずっと前から植木のことが好きだったんだって…」

「………ッ!!」


「……ホント、バカだよね、あたし……植木にあんなこと言っといて、傷つけておいて
……今更ッ…好きだなんて……ッ」
「……森」


泣きながら必死に自分の気持ちを伝えようとしている森
それを植木は黙って聞いている

「…でもね…後悔だけはしたくなかったの…どんなに植木に呆れられようとも、軽蔑されようとも、ホントの気持ちだけは伝えようと思って…」

そう言って森はパッと立ち上がって植木の前に立つ

「植木、ありがとね!今日はこんな話聞いてもらっちゃて……なんかスッキリした」

「……俺はまだなにも言ってないけど?」

「………ッいいよ、分かってるから……それに今日言ったのはあの日の本当の答えを言っただけだから」

いまさら遅いんだけどね、と笑って言う森をじっと見つめる植木

「じゃあ植木、また明日ね!!」

そう言って走り出そうとした時


ガシッと植木が森の腕を掴んだ


「………ッ、なに?」

「……勝手だな…森は…」

ポツリと呟く植木
空はもうほとんど夕日は沈んでいて公園の電灯が点き始める中、東の空には星が輝き始めていた