最後の授業の終わりのチャイムが鳴り響く中、植木は寝ていた。

「ん?……終わったのか」

昨日はほとんど眠れなかった植木は今日の学校にいる時間の半分以上を寝て過ごした。

「……まだねみぃ…」

…と、また寝ようとしたが、家に帰ってから寝たほうがいいに決まってる。そう思い立ち上がり帰りの支度をして、学校を後にした。



「・・・そういえば、少し前までは森と一緒に帰ってたな・・・」

…いつからだっけ、あいつと帰らなくなったの
空を見上げながら考える。
…高校に入ってからクラスが別々になって、それからあんまり話す機会も無くて、
気づいたら一人で帰ることが当たり前になっちまったんだっけ・・・
あの頃は森が隣にいて、いろいろと話かけてきたり、掃除手伝ってもらったりして
結構楽しかったというか・・・なんか心が落ち着けるって感じがしたんだよな・・・

「一緒にかえろうって・・・たまには言ってみようかな・・・」

と思ったのだが、


…わいはじつは・・・・・・好きなんや・・・森のことが・・・


あの佐野が言った言葉を思い出す。

「・・・・・・やっぱ、だめだ・・・」

・・・なんだかまたイライラしてきた、・・・明日気晴らしに、公園の掃除でもしよう・・・
そう心のなかで思い、走って帰っていった。


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「あいちんじゃあね〜」「あ、うん、じゃあね」

森は校門の前で友達と別れの挨拶を交わし、手を振りながら言う。
いつものやりとりなのだが、森は少し元気がない様子だった。

「はぁ〜、今日もあいつと話せなかったなぁ…」

夕焼けに染まる空を見ながら歩きながら呟く。

「告白するって言っても、まず話すきっかけがないし…」

……と、ここで突然携帯の着信メロディが鳴る。

「誰だろ?・・・・・・あ、鈴子ちゃんからだ」


From 鈴子 ジェラート
  突然すみません、じつは一週間後に帰ることになったんですけど、友達にお土産を
買って帰ろうと思うので、明日の祝日、もしよろしければ買い物に付き
合ってくれませんか?お返事待っています。

という内容。もちろんOKの返事を返す。

「そうか・・・鈴子ちゃんまた帰っちゃうんだ・・・」

少し寂しくなったが、首を振って

「ううん・・・別に電話とかすれば話せるし・・・早く帰って支度しよっと!」

……と森は走って帰っていった。


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そして次の日、

「ちょっと早く着すぎてしまいましたね・・・」

腕時計を見ながら呟く。鈴子は森との約束の時間より一時間も早く来てしまったっていた。

「はぁ〜」
「どうした鈴子?こんなところで?」

と言う声

「え?…植木くん!」
「よ」 


「偶然ですね、お出かけですか?」
「いや、掃除しに来ただけ」

と言って箒を取りだす。

「さすが植木君ですね、感心しますわ」 
「ただのボランティアだよ」
と、当たり前のように言う植木

「あっそういえば・・・・・・植木君ちょっと話があるんですが・・・いいでしょうか?」
「ん?別にいいぞ」

と言って鈴子の座っていたベンチの隣に座る。

「で、なんだ?」
「実は、・・・佐野君のことなんですが・・・」
「佐野・・・・・・?」

「えぇ、実は佐野君……………前好きな人がいるって漏らしてたのを聞いてしまったんですが・・・あ、悪気はなかったんです」
「・・・・・・」

植木は黙って聞いていた。

「植木君・・・ご存知ですか?」
「・・・なんで?」

「い、いえ別に・・・一応仲間ですから誰なのかなぁって気になっただけですわ///」

顔を真っ赤にさせながら言う。

「・・・知ってるけど・・・」

「えっ!!!」

とホントに知ってるとは思わずビックリする鈴子。

「・・・・・・誰ですか?」

少し長い沈黙が続く・・・

「・・・・・・・・・・・・森・・・だって、さ・・・」
「・・・!!・・・・・・そう、ですか」
「鈴子?」
「あ、ありがとうございます、すみません変なこと聞いてしまって・・・あ、じゃあ、わたしはここで失礼しますね、ボランティア、がんばってください」

と言って走っていってしまった。

「お、おい鈴子!」

しかしもう鈴子の姿は見えなくなってしまった。

「・・・泣いていた?・・・・・・気のせいかな・・・」

鈴子が一瞬涙を浮かべているように見えたのだが、ゴミでも入ったんだろうと
解釈した。

「ゴミで思い出した・・・掃除しに来たんだっけ。どこ最初にすっかな?」

そう考えながら植木はゆっくりと立ち上がる。

「仲間だから気になった・・・か・・・俺もそうなのかな・・・」
・・・でもなんでこんなにイライラすんだろ、別にあいつらが付き合ったって俺には別に・・・
「くそっ・・・」

イライラする自分に腹を立てながら、駅前を掃除しに向かった。