「ほんと…あれでよかったんだよな…」
家に帰ってきてから植木はまだ同じ言葉を繰り返していた。
…でも、ああでも言わなきゃあいつ、ずっとついてきてたかもしれねぇし、また俺のせいで変なことに巻き込まれちまうかもしれなかったし……これでよかったんだ…
「耕ちゃん、ご飯できたわよ〜!」
「…すぐ行く!」
「どうしたの耕ちゃん?全然箸が動いてないみたいだけど」
まだまったく食べようとしない翔子は心配になって聞いた。
「え…あ、いや、べつに……」
やっと食べ始めるが思ったより箸がすすまない。
「今日学校でなにかあったの?」
「……べつに…なにも…」
「……そう?」
翔子なんだかきまずい雰囲気になってしまったと思い話題を変える。
「そういえば耕ちゃん!あの胸が痛くなるとかの病気どうなった?」
「え、あぁ……まだ治んねぇ……てかむしろどんどん悪くなってる」
「へぇー……あいちゃんとなにかあったの?」
「……っ!!……なんで!?」
まさに的中したので驚く耕助。
「だってそれは恋の病だもん」
「…………へ?」
と間抜けな声を出してしまう。
「おぉー耕助、おまえにも好きな人ができたのか、誰だ誰だ??」
「ほら、前までよく家に遊びに来てた、青い髪の女の子のあいちゃんよ」
「おお、あの子か!たしかにあいちゃんはいい子だったな、あいちゃんだったら父ちゃんも賛成だぞ」
と二人で盛り上がっているのを呆然としてみている耕助。
「………って二人して勝手なこと決めてんだよ…」
「え、違うの?」
「……違うよ」
はぁ、とため息を吐く。
「でも、お姉ちゃんだってそんな時があったのよ」
「え……そうなのか?」
「だからね、耕ち「父ちゃんにだってあったぞ、あれは中学の時だったかな…あの時は小説家になるってきめててな、春子さんによく「とにかく耕ちゃん!」
父の話を遮り翔子は話を続ける。
「自分の気持ちに嘘ついちゃだめよ」
「………え?」
「自分がどう思ってるのかゆっくり考えてみたら答えがちゃんと見つかるから…その病気が治る方法だって見つかると思うから、ね?」
「………わかった…」
「で、その夢を叶えるため父ちゃんは血の滲むような努力をしてき「だ・か・ら!!」
また父の話を無理やり遮り言う。
「なにか相談したいことがあるなら私に言うのよ!」
「…………あぁ……ありがとう、姉ちゃん…」
ごちそうさま、と言って耕助は自分の部屋に戻った。
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「…自分の気持ち、か…」
ベッドに仰向けになりながら考える。
……ってそんな事考えたって俺…もう森にあんなこと言ったんだし……いまさら…
…いまさら、仲直りなんてできる訳ないし…それに俺は森の為を思ってああ言ったんだし
と、あの言葉を言ったあとの森の顔を思い出す…
……森があんな顔したのってあのバトルの時以来だよな…
俺が消える時に見た森の顔…あの時もあんなふうに泣いてた……
で、バトルが終わっても、あいつが隣にいることがなんか当たり前になってて、俺もあいつがいないとなんか落ち着かないってこともあった。
あのキューブの事件の時だって繁華界にいるあいつらの為だって思ってたからがんばれたんだし………森とまた話したり一緒に掃除したりしたいって思ってたから……
今ではクラスが違うせいか別に森がいなくても気にならなくなったけど……胸が締め付けられるような痛みがこの頃になって突然でてくるようになった。
ふと、机に乗っているあの写真を見る。
「……森」
とその気になる相手の名前をつぶやいた。
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「………え、森が…休み?」
月曜日、学校にきてから植木は森の様子が気になりクラスに見に行ったが、
そこには森の姿は無かった。
同じ部活の奴に聞いたところ、体調不良で来ていないらしい。
「……珍しいな」
それから三日ぐらい経っても、森は登校して来なかった。
少し心配だったのだが、
…俺あんなこと言っちまったし、いまさら逢って謝ってもな…
とそう思い、忘れようとする、……だが、
……自分の気持ちに嘘ついちゃだめよ…
翔子の言った言葉を思い出す。
「…………行ってみるか…」
放課後、森の家に行こう決心し、自分の教室に戻った