「ん……」
 よく寝た。
 2時間ほど前に昼寝をしたのだが、最初は1時間ぐらいの予定だったはずが、やっぱりよほど先日の疲れが溜まっているようで2時間もぐっすりと眠ってしまっていた。
 しかし、その分疲れは感じない。
 夕食の準備でもしよう。 
 彗はそう思って、体を起こそうとした。
 と……
(……?)
 胸の辺りに違和感を感じた。
 まるで、何かがいるような…。
(まさか!?)
 彗は自分の掛け布団をめくってみる。
 そこには、円花が自分の胸辺りに手を回して、幸せそうにスヤスヤと眠っている姿があった。
(ッ!?)
 …彗の思考は思うように動いてくれない。
 こんなに無防備な姿を目の前に曝け出されてしまっては、思考がまともに働いてくれるはずもない。
 円花の体を揺らしてみるが、まったく起きる様子もない。
 とはいっても、不思議なことに胸に回された腕の力は強いままだった。
 このままでは、行動することも出来ない。 
 しかし、こんなに幸せそうに眠っているのに、それを邪魔してもいいのだろうか。
 …そもそも、ここは俺の部屋。
 俺の部屋で寝ているその理由が分からない。
 ひょっとして、誘ってるのか?
 など、色々なことが脳裏をよぎる。
 だが、相変わらず円花は幸せそうに眠っているだけ。
 彗の苦労なんて、一つも知る由もなかった。
(あぁぁぁぁぁぁぁ!!)
 彗は猛烈に悩んだ。
 尋常じゃないほど悩んだ。
 勉強以上に頭を回転させた。
 それでも、的確な答えは見当たらない。
(仕方ない…)
 何も見なかったことにして、もう一度眠ることにした。
 ただ、先ほどよりはどこか安心して眠ることが出来た。

続く


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