「……」
「……」
「……」
何故だか分からないが、秋乃、彗、円花の三人の間には重苦しい雰囲気が流れていた。
特に、その雰囲気をまともに浴びているのは…秋乃、円花の間にいる彗だった。
中央にいるのはいいのだが…先ほどから秋乃と円花の怪しげなムードをまったく関係ない自分が受けている。
押し黙ってしまう…というのも、無理はないかもしれない。
(…だから、何でこうなるんだ…)
先日、円花にはちゃんと仲がいいか?ということを確認した。
秋乃にも、ちゃんと同じことを確認した。
だが、互いの答えはちゃんと『仲がいい』という答えだった。
聞き間違いじゃなければ、こんな雰囲気になるはずがない…。
そう彗は思っていたのだが…。
「……」
円花は家を出てから、ほとんど無言だった。
彗が話しかけてきても、ほとんどが『そうですね…』と答え、ほとんど聞こえてはいなかった。
さらに、円花は彗から少しばかり身体を離していた。
…彗に近づくと、先ほどのことが円花の頭にフラッシュバックしてくるからである。
彗の身近に感じた吐息、唇、顔…。
それが、自分の目の前へと迫ってきて…。
「!?」
…思わず円花は自分の想像に驚いてしまった。
自分は一体…彗と何を求めているというのか…。
変なことは考えたことはない…。
彗さんとずっと一緒にいる。
円花にはそれだけで十分だったはずだった。
しかし…
(私、…ひょっとして…それ以上の何かを求めてる?)
自然と紅潮していく顔をブンブンと振り、誤魔化そうとする円花だった。